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[2017-18シーズン戦力分析]ニューヨーク・ニックス

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NBA.comのショーン・パウエル記者が2017-18シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。第6回目は、ニューヨーク・ニックス編をお届けする。

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2016-17シーズン成績:31勝51敗

新加入選手:フランク・ニリキナ(ドラフト)、ティム・ハーダウェイJr.(フリーエージェント)、ラモン・セッションズ(フリーエージェント)、マイケル・ビーズリー(フリーエージェント)

退団選手:デリック・ローズ、ジャスティン・ホリデー

フィル・ジャクソン前球団社長の下でニックスは停滞期を迎え、過去4シーズン連続して負け越した。そして激動の波に苦しめられた。

就任当初は期待されていたが、最後は失望と共に終わった。ヘッドコーチとして通算11回の優勝を誇ったものの、その実績はGMのポジションでは何の役にも立たず、ジャクソン時代は終焉を迎えた。指導者時代と同様の魔法を使えなかったジャクソンを解任したのは、希望を持って招聘を決めたジム・ドーラン・オーナーだった。つまり、ニックスのオーナーの直感は、ことごとく外れているということだ。

最終的に、クリスタプス・ポルジンギスのドラフト指名がジャクソンを救うことはなかった。ジャクソンはカーメロ・アンソニー、メディア、ポルジンギスと不必要に衝突し、ポルジンギスはジャクソンの言動に怒り、昨季終了後のチームミーティングを欠席して母国ラトビアに帰国する始末だった。

ジャクソンが失敗した原因は、傲慢さ、もしくはフロントオフィスでの経験不足、あるいはそれら両方だろう。トライアングルオフェンスへの信仰が強く、コーチに導入するよう促した結果、アンソニーをはじめとする選手たちは反発し、息苦しさまで感じるようになってしまった。

ジャクソンのGM最終年も大失敗に終わったと言わざるを得ない。シカゴ・ブルズから獲得したデリック・ローズとジョアキム・ノアは、チーム力を上げられなかった。大型契約を結んだノアに至っては“GMキラー”と呼べるほどで、年俸に見合わず、生産性の低いパフォーマンスに終わったばかりか、NBAが定める薬物規定違反により20試合の出場停止処分を科されてしまった。

チームの内乱、士気の欠如により、ニックスが掴みかけていた勢いは台無しになった。またアンソニーは、ジャクソンが作り上げた居心地の悪さの中で昨季の大半を過ごさなければならなかった。

選択肢が限られた結果、ドーラン・オーナーはジャクソンを犠牲にすることを決断。長年チームに勤めているスティーブ・ミルズを新球団社長に起用し、サクラメント・キングスとオーランド・マジックで役職を歴任したスコット・ペリーをGMに招聘した。ペリーGMは、アシスタントGMを務めたマジック時代に失敗を経験したものの、ニックスに招聘される直前の2017年ドラフトでは、キングスの戦略に携わる重要な役割を担った。

現在のニックスは“ハウスクリーニング”が必要な状態だが、早急に解決すべき問題がまだ1つ残っている。それは、アンソニーの去就に関する問題だ。

ニックスは、力の衰えが見られ、2600万ドル(約28億3500万円)という高額年俸を受け取る33歳のアンソニーを今季の戦力とみなしていない。チームは新たな方向に舵を切ろうとしているが、アンソニーの契約に含まれるトレード拒否権がネックになっている。この条項をアンソニーに与えたのも、ジャクソンだった。そのためニックスは、アンソニーが望まないチームに同選手をトレードすることができない。それゆえに、移籍先の候補が限られてしまうのだ。

今夏を通じ、ニックスはアンソニーの問題に悩まされている。チームはアンソニーの希望移籍先とされるヒューストン・ロケッツと交渉しているものの、ロケッツはニックスが希望する見返りを何一つ持っていない。このままでは来月下旬から始まるトレーニングキャンプまで事態が解決されない可能性も十分にある。ひょっとすると、ニックスとあと2年契約(2018-19シーズンはプレイヤーオプション)を残しているアンソニーが今季のロスターに残り続けることもあり得るだろう。

ペリーGMが就任する前、ジャクソンは今年のドラフト全体8位でフランス出身のフランク・ニリキナを指名した。U18 FIBAヨーロッパ選手権でMVPを受賞したインターナショナルプレイヤーのポイントガードは、ジャクソンが再びドラフトで掘り当てた金鉱かもしれないが、ダラス・マーベリックスは同9位でデニス・スミスを指名している。スミスはサマーリーグで活躍し(ニリキナは負傷により出場できず)、そのポテンシャルと高い技術を披露した。

これもまたペリーGMが就任する前の話になるが、ミルズ球団社長はティム・ハーダウェイJr.と4年7100万ドル(約77億4300万円)という契約を結び、周囲を驚かせた。ハーダウェイJr.は昨季アトランタ・ホークスで平均14.5得点という成績を残したが、どう考えてもリザーブとしてチームに安定感をもたらす選手、あるいはシックスマンという評価が妥当だ。ペリーGMなら、同様の条件でハーダウェイJr.を獲得しただろうか?

ローズをチームに呼び戻さなかったのは、サプライズではなかった。ローズは昨季平均18得点、フィールドゴール成功率47%を記録したが、3ポイントショット成功率はわずか21%にとどまった。また、チームメイトをリードすることなく、独りよがりのプレイも頻繁に見られた(平均32分の出場でわずか4.4アシスト)。ひょっとすると今夏大型契約を手にするための判断だったのかもしれないが、その考えは誤ったものだった。

最終的にローズはクリーブランド・キャバリアーズと契約し、昨季年俸の2100万ドル(約22億9000万円)から200万ドル(約2億1800万円)というNBA史上に残るほど大幅な減給を受け入れている。

今季もニックスが結果を残せるとは思えない。また、賢明な形でリセットボタンを押しているわけでもない。チーム再建のスピードを上げる唯一の方法は、市場価値が下がる前に至急アンソニーを放出し、何らかの見返りを得ることだ。

原文:30 Teams in 30 Days: Knicks settling in with new leadership but one big question still exist by Shaun Powell/NBA.com(抄訳)


2017-18 ニューヨーク・ニックス主要データ

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ