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東C決勝プレビュー:休養十分のキャブズと球団史上初のC決勝に臨むラプターズがファイナル進出をかけて激突

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5月17日(日本時間18日)からスタートする2016 プレイオフ・イースタン・カンファレンス・ファイナルは、同カンファレンスのレギュラーシーズン1位と2位の対決となった。上位2チームの対戦とはいえ、クリーブランド・キャバリアーズとトロント・ラプターズのここまでの勝ち上がり方を見ると、正反対であることがわかる。

キャブズは、デトロイト・ピストンズとのファーストラウンド、アトランタ・ホークスとのカンファレンス準決勝でスウィープ(4勝0敗)を達成。だが、ラプターズは、インディアナ・ペイサーズとのファーストラウンド、マイアミ・ヒートとのC準決勝でそれぞれ第7戦まで戦い、合計14試合を消化している。

5月8日(同9日)に2年連続のカンファレンス決勝進出を決めたキャブズは、中9日でラプターズとの第1戦に臨む。1回戦終了後からホークスとのC準決勝初戦までにも中8日という間が空き、試合勘の鈍りがネックになりかねないと言われたが、蓋を開けてみれば、昨年のカンファレンス決勝と同様、ホークスをわずか4試合で粉砕している。123-98で勝利した第2戦では、NBA新記録となる1試合25本の3ポイントシュートを成功させ、文字通り圧倒してみせた。

長距離砲が絶好調のキャブズ

今プレイオフのチーム3P成功率が46.2%と絶好調のキャブズにとって、ラプターズは与し易い相手と言える。今季対戦したレギュラーシーズン3試合でキャブズは敵地で2敗を喫しているものの、3Pを86本中43本決めている(成功率50%)。ラプターズは今季レギュラーシーズン中にリーグ29位の被3P成功率(37.3%)を記録するなど、対戦相手にロングシュートを許してしまうケースが多いチームであり、キャブズにとっては得意の長距離砲を生かせる相手ということになる。

J.R.・スミスとケビン・ラブに加え、カイリー・アービング、レブロン・ジェームズ、今シーズン後半に加入したチャニング・フライも長距離砲を武器にしているキャブズは、どこからでも3Pを狙えるチームだ。厄介なことに、彼らがシュートを決め出すとチーム全体が良いリズムに乗り出すため、ラプターズとしては、キャブズのシューター陣に気持よくシュートを打たせないことが重要なポイントになる。

また、今年のキャブズの強みは、昨プレイオフと比べて負傷者の数が少ないことだ。1年前は、ジェームズが重圧を1人で背負い、アービングとラブが負傷離脱した穴をマシュー・デラベドーバとトリスタン・トンプソンが必死に修繕しなければならなかった。だが今年は、現時点でチーム最多得点をあげているのはアービング(24.4)で、リバウンドはラブ(12.5)が牽引している。ジェームズの出場時間を抑えることもできており、“最強の切り札”を取っておける環境を作り上げてきたと言っていいだろう。

デローザンとラウリーの復調は必須

一方、ラプターズがキャブズを攻略するには、今季オールスターに選出されたデマー・デローザンとカイル・ラウリーの復調が欠かせない。

ファーストラウンドから安定しないパフォーマンスが続いた両選手は、116-89で快勝したヒートとの第7戦で合計63得点(ラウリー35得点、デローザン28得点)、フィールドゴール85本中49本を成功させた。プレイオフ14試合目にして、ようやく期待に応える活躍を見せた2人は、キャブズとのシリーズでもこの調子を維持し続ける必要がある。

復調の兆しを見せる両選手のほか、ラプターズはビズマック・ビオンボもキーマンになるだろう。レギュラーシーズン平均5.5得点のビオンボは、ヒートとの第7戦で17得点、16リバウンドの活躍を見せたほか、同シリーズ3試合で二桁得点をあげている。ただし、それら3試合は、いずれもハッサン・ホワイトサイドが右ひざを痛めて離脱した第4戦以降だったことを忘れてはいけない。トンプソン、ラブ、フライ、ジェームズ、そして大木のようなティモフェイ・モズゴフが控えているキャブズを相手に、インサイドで優位を保つのは至難の業だ。

先発センターのヨナス・バランチュナスが右足首を痛めて離脱している限り、ビオンボの負担は大きくならざるを得ない。バランチュナスは、ヒートとの第3戦で負傷する前まで1試合平均4.4本のオフェンシブリバウンドを記録していた。ラプターズがオフェンスで主導権を握るには、リバウンドからのセカンド、あるいはサードチャンスを手にする必要があるため、ビオンボには、ここまで平均2.7本というオフェンシブリバウンドでもステップアップが必要だ。

もし、ディフェンスのスペシャリストであるデマーレイ・キャロルがジェームズを抑えることに集中しなければならない状況になれば、コリー・ジョセフ、テレンス・ロス、ノーマン・パウエルらの得点力が必要になる。この3選手はレギュラーシーズン合計で1試合平均23.7得点を記録したものの、プレイオフでの14試合では合計20.3得点にとどまっている。そのほか、プレイオフ中にこの3選手が同時起用された9試合では4勝5敗、試合出場中の選手のチーム得失点差を示す+/-の指標でも、3選手が同時にコートに出ているケースでは-1.2点を記録するなど、こちらも改善が求められる。

カンファレンス決勝までの勝ち上がり方、チームの健康状態、疲労度、経験のいずれの点を見ても、キャブズが優位と考えるほうが自然ではある。だが、短期決戦に絶対はない。今季球団新記録の56勝をあげたラプターズが、球団史上初のC決勝で昨イースト王者のキャブズを相手にどれだけ食い下がれるか、注目だ。


2016 NBAプレイオフ試合結果


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ