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中1日同士のC準決勝を左右するのは経験の差か、それとも地力の差か――ラプターズとヒートのプレイオフ初対決が実現

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今季のトロント・ラプターズは、リーグ屈指のバックコートコンビに成長したデマー・デローザンとカイル・ラウリーの両輪を軸に据え、順調なシーズンを送ってきた。オフにはデマーレイ・キャロルを獲得し、弱点とされたディフェンスの改善にも余念はなく、センターのヨナス・バランチュナスも安定したプレイでチームを支え、サンアントニオ・スパーズで勝ち方を学んだコリー・ジョセフも新天地での1年目から噛み合うなど、新チームの完成度は高い。

56勝26敗という球団新記録を樹立し、イースタン・カンファレンス2位でプレイオフにも進出した。問題は、その勢いをプレイオフ中も持続することができるどうかだったが、早くも洗礼を浴びている。

ファーストラウンドで対戦したインディアナ・ペイサーズは、今季イースト7位通過とはいえ、堅いディフェンスを武器に今季レギュラーシーズンでの被フィールドゴール成功率でリーグ6位の44%を記録したチームだ。結果的にラプターズが4勝3敗で勝ち上がったものの、デローザン、ラウリーの2大エースはペイサーズの守備にペースを乱された。
デローザンはレギュラーシーズン中の1試合平均23.5得点から17.9得点、ラウリーも21.2得点から13.9得点に落ち込み、第5戦終了時点で3勝2敗と先に王手をかけながらも、決め手に欠き、第7戦に持ち込まれてしまった。

勝敗のかかった第7戦では、デローザンがゲームハイの30得点をあげ、15年ぶりのカンファレンス・セミファイナルにチームを導いたが、フィールドゴール32本中10本の成功は決して褒められた内容ではない。ただ、最も重要な結果を残すことに集中したデローザンからは、どこか吹っ切れた印象が感じられる。カンファレンス・セミファイナルからのシリーズでは、ラウリーが本来の実力を発揮できるかどうかがポイントになるだろう。

対するヒートにあって、ラプターズにないものは、経験にほかならない。球団を背負って立つキャリア13年目のドウェイン・ウェイド、レギュラーシーズン後半から加入した15年目のジョー・ジョンソン、12年目のルオル・デンが先発ラインナップに顔を並べている。セカンドユニットにはウェイドと同期で共に優勝を経験したユドニス・ハズレム、衰えが見えるとはいえ数年前まではリーグトップクラスのパワーフォワードと評価されていた14年目のアマレ・スタウダマイアーが控え、局面を変えたい場面、あるいは試合を締める場面で彼らが出てくるのは、対戦相手にとって厄介でしかない。

チームを率いるエリック・スポールストラ・ヘッドコーチは、ウェイド、クリス・ボッシュ、レブロン・ジェームズ(現クリーブランド・キャバリアーズ)を中心とするチームをまとめ上げ、2011-12シーズンから2連覇に導いた名将だ。ウェイドとともに数々の修羅場を潜り抜けたスポールストラHCは、ボッシュがオールスターブレイクに離脱したチームを短期間で立て直し、終わってみればイースト3位にまで順位を上げた。短期決戦となるプレイオフでも、スポールストラHCの手腕が発揮される場面は少なくないだろう。さらに、ヒートでの2年目となるポイントガードのゴラン・ドラギッチ、リーグ屈指のディフェンダーである今季のブロック王ハッサン・ホワイトサイド、期待の新人ジャスティス・ウィンズロウら若手が、第7戦までもつれたシャーロット・ホーネッツとのファーストラウンドで大きな経験値を得たことも、ヒートにとっては明るい材料だ。

ただ、ホーネッツとのファーストラウンドでは、脆さも垣間見えた。第1戦から2連勝を記録するも、第3戦からはスピードのあるケンバ・ウォーカーやジェレミー・リンらにウェイドやジョンソンが守備面で苦戦し、3連敗で逆王手をかけられてしまった。ホーネッツと同タイプのガードコンビを有するラプターズにスピーディーな展開に持ち込まれれば、百戦錬磨のベテランが揃うヒートとて、立て直すのは容易ではない。

両チーム共にファーストラウンドを第7戦まで戦ったため、僅か中1日の準備期間でカンファレンス・セミファイナルを迎えなければならない。経験、地力の差がシリーズ勝敗に影響を与えるのはもちろんのこと、意外にもプレイオフで初対決という要素も、1つのファクターになり得るかもしれない。


 

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ