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2016 NBAファイナル第7戦プレビュー:ホームでの2連覇か、史上初1勝3敗からの逆転優勝か――?

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3連勝で球団史上初優勝を目指すクリーブランド・キャバリアーズと、3度目、そして最後のチャンスで2連覇達成を目論むゴールデンステイト・ウォリアーズが、2016 NBAファイナル第7戦で激突する。

昨年と同一カードとなった今年のファイナルは、第4戦までを終え、王者ウォリアーズが3勝1敗と王手をかけた。キャブズにとっては、まさに絶体絶命。大方のメディア、ファンは、ウォリアーズの連覇を確信したはずだ。たとえ1勝を返せたとしても、ウォリアーズを相手に2連勝し、キャブズが第7戦に持ち込む確率は極めて低いと予想したはずだ。

それも当然だろう。なにしろ今季のウォリアーズは神がかっていた。レギュラーシーズンで前人未到の73勝9敗を記録し、年間最多勝利記録を更新。エースのステフィン・カリーは、選手として更に進化を遂げ、2年連続のシーズンMVPを受賞し、名実共にNBAの顔となった。また、チームと同様に、カリー個人もプレイオフを通じ大きな試練を乗り越えた。

ヒューストン・ロケッツとのウェスタン・カンファレンス・ファーストラウンド中に右足首と右ひざを負傷するアクシデントに見舞われたカリーは、ポートランド・トレイルブレイザーズとのカンファレンスセミファイナル第4戦で復帰。オーバータイムにもつれた試合でベンチ出場から40得点をマークしたほか、オーバータイムの5分間だけで17得点を叩き出す圧巻のパフォーマンスでチームを引っ張った。

ブレイザーズを下してカンファレンスファイナルに勝ち上がったウォリアーズの前に立ちはだかったのは、優勝候補の一角と言われたサンアントニオ・スパーズを撃破したオクラホマシティ・サンダーだった。スパーズが敗退した時点で、ウェストからはウォリアーズがファイナルに勝ち上がる、という意見が多数を占めたのに対し、先に王手をかけたのは、下馬評では不利とされたサンダーだった。

第4戦を終えた時点で1勝3敗に追い詰められたウォリアーズだったが、第5戦から3試合続けて30得点以上を決めたカリーに加えて、第6戦ではスプラッシュブラザーズの相棒、クレイ・トンプソンがプレイオフ戦でのNBA新記録となる11本の3ポイントシュートを含む41得点の大活躍を見せ、NBAプレイオフ史上10例目となる1勝3敗からの3連勝で逆転勝利を果たし、2年連続ファイナル進出を達成した。困難を乗り越え、NBA史に名を刻み続ける王者が、ファイナルで3勝1敗と王手をかけた時点で2連覇は間違いない、と思われたとしても不思議ではなかった。

だがキャブズ、いや、レブロン・ジェームズにも、簡単に勝負を諦めきれない理由があった。2014年のオフにキャブズ復帰を決意したジェームズにとって、地元クリーブランドにラリー・オブライアン・トロフィーを持ち帰ることは悲願でもある。復帰1年目に、本拠地クイックン・ローンズ・アリーナでウォリアーズに優勝を決められる屈辱を味わったことがモチベーションになっていたのだろう。追い詰められて迎えた敵地での第5戦、ジェームズは、カイリー・アービングと共に41得点をあげて一矢報いると、ホームでの第6戦でも41得点、11アシスト、8リバウンド、4スティール、3ブロックという怪物ぶりを発揮し、勝利に貢献した。ファイナルで2試合連続40得点以上を記録した史上5人目の選手となったジェームズだが、後がない状況となって以降、一貫して、「目の前の試合、瞬間に集中する」と、繰り返し発言している。その姿勢は変わらず、シリーズを3勝3敗のイーブンに戻した第6戦後も、「僕たちは次の試合、次の1分、実行しないといけないゲームプランに集中して、次のプレイに繋げられるよう努力した」と、話した。

「決して、第7戦を目指したものではなかった。たしかに、僕たちは第5戦が終わった時点で1勝3敗に追い詰められた。そのとき、ホームに必ず戻らないといけないと感じた。ホームに戻って、ファンの皆の前でプレイしよう、という感じだった。そして、それを実現できたんだ」。

ケビン・ラブの不調こそ不安材料だが、第6戦ではトリスタン・トンプソンが15得点、16リバウンド、J.R.・スミスも10本中4本の3P成功を含む14得点をあげてジェームズとアービングをサポートするなど、チームの状態は上向いている。

一方のウォリアーズは、先発センターのアンドリュー・ボーガットが第5戦で左ひざを痛めて離脱し、アンドレ・イグダーラも腰痛を抱えながらプレイを続けるなど、こちらは決して万全とは言えない。第6戦では、カリーがファウルトラブルに苦しめられキャリア初のファウルアウトを経験したほか、カリー、トンプソン、イグダーラ、ハリソン・バーンズ、ドレイモンド・グリーンで構成される「死のラインナップ」を先発に起用して勝負をかけたが、第1Q終了時点で20点差(11-31)をつけられ、最後まで試合の主導権を握れなかった。

試合までイグダーラの腰の状態が100%に戻る可能性は低く、ウォリアーズのスティーブ・カー・ヘッドコーチは、前日会見で守備的な戦術を用いる可能性も示唆している。

おそらくキャブズは、第5、6戦と同様に、ジェームズとアービングを中心にオフェンスを組み立ててくるだろう。直近2試合でのファストブレイクからの得点では、キャブズが47-19と圧倒しており、その内の半分以上をアービング(18得点)とジェームズ(12得点)で記録している。そして、今シリーズでは1試合のポゼッション数の多かった3試合で勝利をあげていることから、キャブズは第7戦でも速いペースに持ち込もうとするはずだ。

ホーム開催が有利にはたらくとはいえ、ここ2試合続けて精彩を欠いてしまっている以上、ウォリアーズが感じるプレッシャーは相当なものになるだろう。しかし、その重圧を跳ね除けてこそ、2年連続王者に相応しいと言える。カーHCは、第7戦のプレッシャーについて聞かれ、こう答えた。

「第7戦でプレッシャーを感じないとしたら、人間ではないね。選手たちにも、そう話した。当然プレッシャーを感じるだろう。不安も出てくるだろう。しかし、この舞台でプレッシャーを感じられる我々は、どれだけ幸せだと思う? 中には大金を稼ぎはするが、ロッタリーに回るチームでキャリアを終え、毎シーズンのようにプレイオフを観戦する側の選手だっている。(プレッシャーを感じられるということは)素晴らしいことだ」。

ウォリアーズが3度目のチャンスを生かし、2年連続、フランチャイズ通算5度目の優勝を決めるか、キャブズが3連勝でファイナル史上初となる1勝3敗からの逆転優勝、そして球団史上初の優勝を飾るのか。NBAファイナル史上に残るシリーズの勝者が、オラクル・アリーナで19日(同20日、午前9時~)に開催される第7戦で決まる。


[特集]2016 NBAファイナル: ウォリアーズ vs キャブズ


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ