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[2016-17シーズン戦力分析]ゴールデンステイト・ウォリアーズ

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NBA.comのショーン・パウエル記者が2016-17シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。最終回となる第30回は、ゴールデンステイト・ウォリアーズ編をお届けする。


2015-16シーズン成績:73勝9敗

新加入選手:デイミアン・ジョーンズ、パトリック・マコー、ケビン・デュラント、ザザ・パチューリア、デイビッド・ウェスト、ジャベール・マギー

退団選手:リアンドロ・バルボサ、ハリソン・バーンズ、フェスタス・エジーリ、ブランドン・ラッシュ、アンドリュー・ボーガット、マリース・スペイツ

昨シーズンのゴールデンステイト・ウォリアーズは、レギュラーシーズンで73勝(9敗)をあげ、NBA年間最多勝利記録を更新した。だが、2年連続で進出したNBAファイナルでは3勝1敗と先に王手をかけながらも、クリーブランド・キャバリアーズに逆転を許し、2連覇を逃した。

富を得た者がさらに富を得るというケースにはならなかった。だが今オフ、彼らはケビン・デュラントを獲得した。もともと恵まれていたチームが、ついには吐き気を起こすほど豊かになった。それはまるで大金持ちが当たりくじを金で買うようなものだった。

そんな彼らを妬むべきか? 祝福すべきか? リスペクトすべきか? それとも恐れるべきか?


現代NBAを代表する選手でもあるケビン・デュラントが昨季73勝をあげたウォリアーズにやってきた

ウォリアーズに関して言うなら、これら全てが当てはまるだろう。ここ2シーズンもの間、彼らはNBAで最も支配的なチームであり、中心選手が全盛期にある。そこにスーパースターの――しかも今まさにキャリア全盛期の――デュラントが加わった。唐突に、彼らは2000年代中盤のタイガー・ウッズ(プロゴルファー)のように、周りの全てを敵にするような存在になってしまった。こうなった今、あなたは今季ウォリアーズがタイトルを獲得する、またはリーグ全体を席巻すると好んで予想するだろうか?

もしドレイモンド・グリーンがキャバリアーズとの昨ファイナル第5戦で自ら出場停止処分になる状況を作っていなかったら、きっとウォリアーズは2連覇を達成していただろう。混戦を抜け出した2015年1月以降、ウォリアーズに肉薄したチームはいない。けがから復活を果たし、毎晩相手ディフェンスを苦しめることができるデュラントは、現代のNBAで五指に入る選手である。そんな彼らが一つのチームに集結すれば、否が応にも注目が集まる。

チームの他の選手と同様に利他的なデュラントは、ウォリアーズにフィットするだろう。彼は6年もの間、シュート優先型のポイントガード、ラッセル・ウェストブルックと同じチームでやってきたのだ。ステフィン・カリー、クレイ・トンプソンらと同じチームでプレイすることが問題になるわけがない。グリーンが試合の大半を通して繋ぎ役、コントロール役に徹してオープンなチームメイトを探し続ければ、チーム全員に十分なだけのシュート機会が訪れるだろう。ひょっとすると、今シーズンはウォリアーズから4選手がオールスターに選出されるかもしれない。

オクラホマシティ・サンダーからフリーエージェントとなってウォリアーズと契約した後、予想された通り、デュラントはファンからもリーグ内からも非難された。だが、彼は後ろを振り返ったりはしない。複数の観点から見ても、デュラントの決断は思慮分別のあるものだったと言える。

現在のウォリアーズは、(来夏FAとなりマックス契約を結ぶことが確実なカリーを除いて)中心選手が長期契約下にあり、信頼できる能力の持ち主だ。スティーブ・カーという優秀なヘッドコーチ、スマートなボブ・マイヤーズGM、必要な資金を投じるオーナーのジョー・レイコブといった首脳陣にも恵まれている。

デュラントが退団したことにより、ライバルだったサンダーの戦力は激減した。これでウォリアーズにとってウェスタン・カンファレンスで目の上のたんこぶとなりかねないのは、サンアントニオ・スパーズとロサンゼルス・クリッパーズくらいなものだろう。

そして、デュラントはサンダーに何の貸し借りもなかった。全盛期の数年間をチームに尽くしてきたのだ。ときとして、変化は精神的にプラスに働き、力の源にもなるものだ。

そういうわけで、ウォリアーズを悪役とみなすのは愚の骨頂である。サラリーキャップを上手く調整してスーパースターとサインしたから? FA選手を惹きつけすぎる存在になったから? 馬鹿なことを言うものではない。称賛されることはあっても、軽蔑されるべきものではないはずだ。

それに、このチームには“バッドガイ”と呼ばれるような問題児もいない。グリーンについては異論も出てくるかもしれないが、彼が例外なだけで、あとは皆、ナイスガイばかりだ。ウォリアーズに向けられる怒りの大半の根底にあるのは嫉妬であろう。もしくは、チーム全員が健康なら、という仮定の上でのみ成立する話ではあるが、王朝時代を築きつつあるチームにどうやって対抗すべきかという、現実的な不安だ。


デュラントの加入により、クレイ・トンプソン(左)、ドレイモンド・グリーン(中央)らのプレイにどんな影響があるか?

何よりも他チームを苛立たせたのは、デュラント獲得後にザザ・パチューリアと契約できたことだろう。デュラントと契約するため、ウォリアーズはアンドリュー・ボーガットをトレードし、ハリソン・バーンズを慰留しない決断を下した。彼ら2人にとってもローテーションの中心から外れてしまうという苦痛が生じるからでもあった。

しかし、パチューリアは破格の1年わずか290万ドル(約3億円)という条件でウォリアーズに加入した。昨季ダラス・マーベリックスで見せたパフォーマンスを考えれば、市場価格を大きく下回る金額だ。それでもパチューリアは、NBA史に残るチームで先発として起用される可能性を感じてこのチームにやってきた。優勝リングを獲得するために加入したデイビッド・ウェストも同じだ。

オーナーのレイコブは、新契約でおそらく3000万ドル(約31億円)を超える年俸を要求するであろうカリー、来夏同じくFAとなるアンドレ・イグダーラ、数年内にFAになるトンプソンらとの契約問題に直面する。しかし、それはまだ先の話だ。

今のウォリアーズは悠々とストレッチリムジンに乗っている状態だ。彼らは来年6月の2017年NBAファイナルまで、快適なドライブを楽しむことができるかもしれない。

原文:30 Teams in 30 Days: Warriors look to regain title with help of Durant by Shaun Powell/NBA.com


2016-17シーズン NBA全30チーム戦力分析


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ