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[2016-17シーズン戦力分析]ミネソタ・ティンバーウルブズ

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NBA.comのショーン・パウエル記者が2016-17シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。第5回は、ミネソタ・ティンバーウルブズ編をお届けする。


2015-16シーズン成績:29勝53敗

新加入選手&ヘッドコーチ:トム・シボドーHC、クリス・ダン、コール・オルドリッチ、ジョーダン・ヒル、ブランドン・ラッシュ

退団選手&HC:ダムヤン・ルデジ、グレッグ・スミス、サム・ミッチェルHC

ミネソタ・ティンバーウルブズは、2003-04シーズンを最後にプレイオフ進出から遠ざかっている。その当時、ケビン・ガーネットが全盛期だったにもかかわらずだ。

ミネソタには、“失われた10年”というフレーズが浸透してしまっている。ウルブズの存在は、地元の”冬季競技”ではNHLミネソタ・バイキングス、氷上での釣りに次ぐ3番手。これが現実だ。直近12年で勝ち越せたシーズンは、44勝38敗を記録した2004-05シーズンのみで、2009年ドラフトでは1巡目5位と6位の指名権を保持していたものの、ステフィン・カリーの指名を見送ってしまった(カリーは7位でゴールデンステイト・ウォリアーズが指名)。

こうなっては、荒地で道に迷ったのと同じである。2000年代中盤から不運と、質の低いマネージメントの影響からトラブルに遭遇してきたが、フリップ・サウンダーズがチームに戻り、ようやく船が正しい方向に舵を取り始めた。そんな矢先、サウンダーズが癌に倒れ、急逝する事態になろうとは――。

サウンダーズは生前、チームに再び繁栄をもたらすため、生え抜きだったケビン・ラブをトレードに出し、クリーブランド・キャバリアーズから2014年ドラフト1位のアンドリュー・ウィギンズを獲得。その翌年には、ドラフト全体1位でカール・アンソニー・タウンズを指名し、新時代のチームを支える核となれる2選手を獲得した(ウィギンズとタウンズは、2014、2015年の新人王を受賞)。これだけの面子に心がそそられ、トム・シボドーは他チームからのオファーを断り、ミネソタで指揮をとることを選んだ。

シボドーは、今春の市場でフリーだった指導者の中でベストな存在で、チームオーナーのグレン・テイラーがHC職だけでなくGM職をもシボドーに託したのも賢明な判断だった。

シボドーのヘッドコーチとしての手腕は疑いようがない(シカゴ・ブルズのフロントを除いて)。だが、チーム運営に携わるのは初めてのことだ。故に、最初の決断に注目が集まった。

まずシボドーは、サンアントニオ・スパーズからフロントとして経験豊富なスコット・レイデンを引き抜き、諸々の調査仕事を一任。その後、幸運にも2016年ドラフトでクリス・ダンの指名に成功した。

ダンは、闘争心旺盛なメンタリティを持ち、強い決意を持ってプレイし、絶え間なく守備にも力を注ぐ選手。シボドーが選手のDNAに求めるあらゆる資質を備えている。ラスベガスでのサマーリーグでは、脳震盪を起こす前に優れたオフェンス力を惜しみなく披露した。

そうこうしている間に、先発ポイントガードのリッキー・ルビオの周辺では、トレードに関する噂が出始めた。昨季ルビオのバックアップを務めたタイアス・ジョーンズがサマーリーグMVPに輝くと、ルビオの去就がさらに慌ただしくなった。結果的に、ウルブズは若いPG3人をロスターに抱えている。チームに必要なのは2人だ。シボドーがトレードというカードを切るかどうか、その試練と向き合う時期は、すぐそこまできているかもしれない。

フリーエージェント選手の獲得において、シボドーは無難な道を選択した。昨季ロサンゼルス・クリッパーズで印象に残るパフォーマンスを見せたコール・オルドリッチ、元ロサンゼルス・レイカーズで先発を任され、昨季はインディアナ・ペイサーズで貴重なロールプレイヤーとして活躍したジョーダン・ヒルを獲得。両選手共に長期的な戦略には含まれないが、すでにNBAトップ5のセンターとも評価されるタウンズを補佐できる。

つまり、今季のウルブズのコアには、タウンズ、ウィギンズ、ダン、ザック・ラビーン、ジョーンズという、20代前半の選手が揃った。これだけ今後を楽観視できる感覚は、少なくとも過去10年はツインシティーになかったものだ。

ただし、ウルブズは完成されたチームではないことを胸に留めておくべきだろう。如何にシボドーがベンチから指揮を執ろうと、苦戦は免れない。シボドーがチームに急成長を求めていると考えるのは酷だ。若い選手は安定感にかけ、ミスを犯す。守備でも苦しむ。そういうものだ。つまり、もし今季ウルブズがプレイオフを逃し、再びロッタリーに回ったとしても、ショックを受ける必要はないということだ。そういうことは、チームとして大成する前に常に起こることなのだから。

シボドーにとっての試練は、守備でチームをひとつにまとめ、オフェンス面で選手各自が犠牲になることを伴うシステムに、若い選手を順応させることだ。また、ルビオを取り巻く状況、サラリーキャップに関しても対応を迫られる。

現在はルーキー契約の選手を多く抱えているため余裕があるものの、今後数年で主力選手たちの年俸が急上昇する事態は避けられない。そのとき、誰が必要で、誰ならトレード要員に回す価値があるかを見極めなければいけない。

それまでは、サウンダーズが築いた明るい未来を感じられる状況を満喫できる。チーム強化に成功した夏が過ぎ、エキサイティングな秋を迎える。才能のある選手、貴重な人材は揃った。そして、いつか唐突に、“失われた10年”の存在すら忘れてしまうのだろう。

原文:30 Teams in 30 Days: Challenges begin in Brooklyn by Shaun Powell/NBA.com​


2016-17シーズン NBA全30チーム戦力分析


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ