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[2016-17シーズン戦力分析]オクラホマシティ・サンダー

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NBA.comのショーン・パウエル記者が2016-17シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。第26回は、オクラホマシティ・サンダー編をお届けする。


2015-16シーズン成績:55勝27敗

新加入選手:ドマンタス・サボニス、ダニエル・ハミルトン、ロニー・プライス、ビクター・オラディポ、アーサン・イリヤソバ、アレックス・アブリネス、ジョフリー・ラバーン、セマジェ・クリストン

退団選手:ケビン・デュラント、ランディ・フォイ、サージ・イバカ、ディオン・ウェイターズ

過去6年間、NBAのトップチームの一つに数えられてきたオクラホマシティ・サンダーは、2016年のプレイオフ、ウェスタン・カンファレンス・ファイナルでゴールデンステイト・ウォリアーズを3勝1敗に追い詰めながらも敗れた。そして、フリーエージェントとなったケビン・デュラントを失った。この次の展開はどうなるのか? 誰しもがサンダーに尋ねたい質問だ。

サンダーには不幸が2つ重なった。ひとつはデュラントとラッセル・ウェストブルック時代に優勝できなかったこと。そしてもう一つは、FAとなったデュラントを失ったこと。それ以外は素晴らしい時間を送ってきたのだ。

次の展開が気になるのも無理はない。しかし、ここはひとまず改めて、今夏サンダーに何が起こったかを振り返ってみたい。

確かなのは、デュラントがサンダーよりウォリアーズのほうが優勝できる可能性が高いと感じたということだ。それが大前提での移籍だった。それに、サンダーよりも優れたチームメイト、コート外でのビジネスチャンス、オクラホマシティより住みやすい街、複数回優勝できる可能性をゴールデンステイトに見出したのだ。おそらく、彼の考えは正しい。

ただ、デュラントがサンダーに8年も在籍し、全盛期を捧げたことを我々は忘れてはならない。また、彼はオクラホマシティのコミュニティで慈善活動などに精力的に関わった。球団にも街にも、貸し借りはないのである。そして、FAというのは選手に与えられた権利であり、自由に好きなチームに移籍できる制度だ。デュラントであれ、他の選手であれ、移籍を決めた途端に批判するのはお門違いも甚だしい。文字通り“フリー”になれなければ、なんのためのFAなのか?

繰り返しになるが、デュラントは、彼の輝かしいキャリアの8年間をサンダーに捧げた。チームに好成績をもたらし、オールスターに出場し、シーズンMVPも受賞した。そして彼は変化を求めた。サンダーとオクラホマシティは、これまで全力を尽くしてくれた元エースの今後の成功を願うべきだ。

そんなデュラントを失ってなお、サンダーは崩壊の一途を辿るわけではない。デュラント時代のサンダーは、デュラント抜きのウォリアーズよりも実力が上だったという議論も起こるかもしれないが、そんなことはどうでもいい。彼はチームを去った。これからは、サンダーとウェストブルックがチームを作っていく時期だ。

幸いにも、サンダーには優秀なGM、サム・プレスティがいる。結果的にデュラントとジェームズ・ハーデンを失ったものの、どちらのケースもプレスティに非はなかった。

ハーデンのケースの場合、チームのオーナーがサラリーキャップを超過し、ラグジュアリータックスの支払い義務を回避したかったことが原因だ。今思えば、数年は経営的に厳しかったかもしれないが、オーナーのクレイ・ベネットが破産するわけでもあるまいし、当時ルーキー契約があと1年残っていたハーデンを是が非でもキープすべきだった。

今オフ、プレスティは小さな勝利を手にした。いや、大勝利となる可能性を秘めた勝利と言っておくべきかもしれない。それは、ウェストブルックが少なくとも1年FAになるのを遅らせることに合意したことだ。今オフに結んだ延長契約により、ウェストブルックの年俸は900万ドル(約9億3900万円)増え、2018年まではFAにならないことが保証された。

そしてデュラントが去就を決断する前、プレスティGMはどちらに転んでも良い補強を進めた。まずサージ・イバカをオーランド・マジックにトレードし、将来有望なビクター・オラディポとドマンタス・サボニスを獲得した。

オラディポは即バックコートでウェストブルックの相棒となり、サンダーはディオン・ウェイターズとの延長契約を選択肢から外した。オラディポのジャンプシュートは改善が必要だが、ウェストブルックと同様に高回転型モーターが内臓され、スピードに優れ、ディフェンスで積極的なプレイを見せてくれる選手だ。エンターテイメント性に優れるバックコートコンビは、ポートランド・トレイルブレイザーズのデイミアン・リラード&C.J.・マッカラムと同型と言える。ただ、成功するかどうかはオラディポが次のステップに進めるかどうかにかかっている。

新人サボニスは、以前ブレイザーズで輝かしいキャリアを送ったアルビダス・サボニスの息子だ。タフネスと怖いもの知らずの性格はNBAへの順応に役立つはずだ。昔気質のパワーフォワードで、エネス・カンター、スティーブン・アダムズに足りない部分を補ってくれるはずだ。


オーランド・マジック時代を超える成長が期待される新加入のビクター・オラディポ


リトアニアの巨星アルビダス・サボニスの息子ドマンタスがサンダーでNBAデビューを果たす

イバカはサンダーで安定したキャリアを送ったが、全盛期を過ぎている。それ故にプレスティは対応を迫られた、というわけだ。アダムズがリムプロテクターとして成長を見せてはいるが、イバカに代わる存在を探さなくてはならない。

今のところウェストブルックからは、サンダーで今後も長期間プレイする気構えは見られない。それもそのはず、2018年の夏まではチームに残るのだから、それまでにサンダーが自分にとって適切なチームかどうかを判断すれば良いだけのことだ。

もちろん、今季のウェストブルックはシーズンMVP有力候補にのぼるシーズンを送る準備を整えている。だが、ポストシーズンに進出できたとしても、どこまで勝ち上がれるだろうか? そして、ウェストブルックが再び延長契約にサインするのに足りる優秀な選手を、あと2年でチームに加えられるだろうか?

とにかく、サンダーはウェストブルックのチームになった。シーズンMVPを受賞できるだけのスタッツを残す舞台も整った。しかしながら、どれだけウェストブルックが素晴らしいシーズンを送ろうとも、デュラントをチームに残したかったと、サンダーも、そしてウェストブルック本人も思っているに違いない。

原文:30 Teams in 30 Days: Westbrook eager to put Thunder on his back by Shaun Powell/NBA.com


2016-17シーズン NBA全30チーム戦力分析


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ