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[2016-17シーズン戦力分析]フェニックス・サンズ

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NBA.comのショーン・パウエル記者が2016-17シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。第4回は、フェニックス・サンズ編をお届けする。


2015-16シーズン成績:23勝59敗

新加入選手:ドラガン・ベンダー、タイラー・ユリス、マーキス・クリス、リアンドロ・バルボサ、ジャレッド・ダドリー

退団選手:ジョン・ルーアー、ロニー・プライス、ミルザ・テレトビッチ、ボグダン・ボグダノビッチ

2シーズン前に48勝(34敗)というサプライズを起こして以来、フェニックス・サンズは後退している。しかも、2009-10シーズンを最後にプレイオフに進出できていない。

2年前の夏、サンズは高齢ながらも実績のあるタイソン・チャンドラーを獲得し、昨夏にもトップフリーエージェントだったラマーカス・オルドリッジ(現サンアントニオ・スパーズ)の獲得を狙った。しかし、それだけの戦力を獲得し、強豪揃いのウェスタン・カンファレンスに強烈なメッセージを発するのは、少々野心的すぎた。オルドリッジがスパーズと契約すると、サンズは即刻、“プランB”への変更を余儀なくされ、才能のある若手に将来を託さなければならない状況に陥った。

2016年のドラフトでは、ドラガン・ベンダー、マーキス・クリス、タイラー・ユリスを獲得し、そのプランを加速させた。ベンダーとクリスは上位10位以内の指名選手で、ユリスは2巡目指名ながら能力は1巡目指名クラスと評される。177cmと小柄ながら、ラスベガスでのサマーリーグでは輝きを放ち、サマーリーグのセカンドチームに選出された。

昨季のオールルーキー・ファーストチームに選出されたデビン・ブッカーと彼らを加えたサンズのロスターには、チームの将来を築く可能性のある20歳以下の選手が4名登録されている。これはひょっとすると、チームの速やかな再興、ファンベースの活性化に繋がる最も経済的な手法かもしれない。サンズは、優勝経験こそないものの、それ以外のほぼ全てのことを成し遂げてきた深い歴史を持つチームだ。現在の戦力は優勝という目標を達成できるレベルにはほど遠いが、ライアン・マクドノーGMが今後正しい判断を取り続ければ、という条件付きで、プレイオフ進出レベルのチームになれるだけの柔軟性と高い能力の持ち主が揃ったチームと言えなくもない。


2年目を迎えるデビン・ブッカーは、チームの得点源として一層の飛躍が期待される

マクドノーGMに求められるのは、根拠に基づく信頼できる決断だ。過去にはむやみにポイントガードを増やし、慌てて放出した苦い経験がある。2015年のトレード期限日のことだ。マクドノーGMはアイザイア・トーマスとゴラン・ドラギッチという2人のPGをまとめて放出した。その結果、オフェンシブでチームにとって優しい契約内容だったトーマスは移籍先のボストン・セルティックスでオールスター選手に変貌を遂げた。ドラギッチもマイアミ・ヒートに定着し、オールスターにこそなっていないもののチーム内で確固たる地位を築いている。

もしかすると、チャンドラーとの契約が、2年前のドラフト1巡目で指名したアレックス・レンの成長を妨げた可能性もある。また、マーカス&マーキーフのモリス兄弟に絡む問題で、チーム内が困惑したこともあった。

それでも、サンズはまずまずの状態を維持している。割安なルーキー契約の選手を多く擁し、ベテランガードのブランドン・ナイトとエリック・ブレッドソーは今夏のFA選手と比較すれば格安だ。つまり、マクドノーGMには、基本的にチームの経済状況を巧みに操れるだけの余裕があるということだ。若手が成長し、高額な契約を結ぶ段階になる前に、質の高い選手を加えることが得策と言える。

このオフ、サンズは手始めにアール・ワトソンを暫定ヘッドコーチから正HCに昇格させた。ジェフ・ホーナセック前HC解任後に指揮を執り、9勝24敗と成績は付いてこなかったが、若手選手たちはワトソンの下でプレイすることを望んでいるため、チームにとって適切な人事だった。


昨季終了直後に暫定指揮官から正ヘッドコーチに就任したアール・ワトソンHC

今年のドラフトはビッグマン不足と言われたが、ベンダーとクリスは優れたフロントコートの選手として評価されている。両選手共にまだ10代と若く、特にクリスは、大舞台での経験が足りず、まだ荒削りではあるものの、身体能力に優れており、ドラフト前のワークアウトで評価を上げた。サンズは再建途中のチームであるため、選手として成長する上で必要な出場機会も十分に与えられるだろう。

同じく新人のユリスは、今ドラフトでの儲けもの選手になるかもしれない。177cmという身長の低さが懸念され、指名順位は下がった(2巡目34位)が、天性の才能を高く評価されている。今はバックコートがブレッドソー、ナイト、ブッカーで埋まっているものの、ユリスがローテーションに組み込まれるようなプレイを見せられれば、マクドノーGMが今季中にブレッドソーを放出する決断を下す可能性もある。

今のサンズに必要なのは、チームの雰囲気を良い方向に変える、若手の指南役となれるベテランだろう。そこで今オフ、チームはリアンドロ・バルボサ、ジャレッド・ダドリーという信頼の置けるリーダータイプのベテランを獲得した。2人共、以前サンズでプレイした経験がある。バルボサは2006-07シーズンにシックスマン賞を受賞し、ダドリーもサンズでの4シーズン(2009~13年)でキャリア最高の成績を記録した。サンズ加入2年目を迎えるチャンドラーも、常にどっしり構え、若手に貴重な経験を伝えられるベテランだ。


(左から)マーキース・クリス、タイラー・ユリス、ドラガン・ベンダーの新人トリオ

若手を中心に据えるチームである以上、当面の評価は低くなる。だが、サンズは我慢強くならなければいけない。クリス、ベンダー、ユリスらに、失敗から学ばせるのに最適な時期でもある。また、スター選手になれる可能性のあるオフェンス力を持つブッカーを自由にプレイさせる時期としても適切だ。

“プランB”を進める上で新人3選手を獲得したサンズは、徐々にではあるものの、チームのアイデンティティを構築していく時期に入った。もし今ドラフトで抜け目なく3選手を獲得したのであれば、今季のサンズは一見に値するだろう。少なくとも、過去数年間のチームと比べれば、それだけの価値はあるはずだ。

原文:30 Teams in 30 Days: Suns go young to craft a new future by Shaun Powell/NBA.com​


2016-17シーズン NBA全30チーム戦力分析


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ