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[2016-17シーズン戦力分析]インディアナ・ペイサーズ

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NBA.comのショーン・パウエル記者が2016-17シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。第20回は、インディアナ・ペイサーズ編をお届けする。


2015-16シーズン成績:45勝37敗

新加入選手&ヘッドコーチ:ネイト・マクミランHC、ジョージ・ニアン、アーロン・ブルックス、アル・ジェファーソン、ケビン・セラフィン、ニック・ゼイスロフト、ジェレミー・エバンス、ジェフ・ティーグ、サディアス・ヤング

退団選手&ヘッドコーチ:フランク・ボーゲルHC、ジョーダン・ヒル、ソロモン・ヒル、ジョージ・ヒル、タイ・ローソン、イアン・マヒンミ、シェイン・ウィッティントン

ポール・ジョージが右足骨折から完全復活を果たした2015-16シーズン、インディアナ・ペイサーズはプレイオフに返り咲いた。そして迎えたオフシーズン、球団社長のラリー・バードは、周囲が驚く決断を下す。

まず、ヘッドコーチのフランク・ボーゲルを解任した。ジョージ不在時期にチームを上手くまとめあげ、昨プレイオフ・ファーストラウンドでは上位シードのトロント・ラプターズを相手に第7戦まで戦った指揮官の首を切ったのだ。NBA全体でもこの人事に驚きを隠せないという意見が続出した。評価が上がることはあってもボーゲルの解任は理解できない、という空気が出来上がったのだった。

不可解な人事は、バードがアシスタントコーチのネイト・マクミランを新HCに昇格させたことでさらに物議を醸した。巷では、「バードはフロントとして不安症に苛まれているのでは?」と思われたほどだ。


フランク・ボーゲル前HCに代わって今季からペイサーズの指揮を執るネイト・マクミラン新HC

だが、次にバードが打った手は、ペイサーズ史上屈指の印象に残る補強になったと言える。ジョージ・ヒルと交換で、地元インディアナポリス出身のガード、ジェフ・ティーグをアトランタ・ホークスから獲得したのだ。それからブルックリン・ネッツで埋もれかけていたサディアス・ヤングに救いの手を差し伸べると、オールドスクールながら高い技術を持つセンターのアル・ジェファーソンを続けてロスターに加えることに成功した。

これらの補強により、ようやくボーゲル解任に関する雑音もトーンダウンし始めた。

バードが最も不服としていたのは、昨季までチームが流麗なプレイをできていなかったことだった。不活発で、予測可能なプレイばかりするチームに不満を持っていたバードは、よりワイドオープンなオフェンスを展開したいと考えた。もちろん、それを実現するには、相応の選手、相応のシステムが必要になる。

ヒルをアップグレードさせたようなティーグの加入により、今季はより質の高いプレイが見られるはずだ。ティーグには、オープンなチームメイトを探し、かつリムにアタックする能力が備わっている。ヒルはコンボガードながら、チャンスを作る際にはチームメイトに任せる場面が多かった。自ら得点機会を作れたのはジョージくらいなもので、ほかに自らチャンスメイクできる選手はいなかった。ティーグの加入はサラリーキャップ上もチームに優しい。今季が契約最終年のティーグは、各チームのオーナーたちが大盤振る舞いしている昨今のフリーエージェント市場で自らの価値を高めようと、相当やる気になっているだろう。


得点力とゲームメイクを併せ持つジェフ・ティーグの加入でペイサーズのオフェンスは活性化しそう

ヤングは多くのHCにとって歓迎すべき選手の一人だ。ハードワークを厭わず、手がかからず、真面目な性格のベテランだからだ。パワーに秀でるわけでもなく、かといってスウィングマンのスポットでのシュートに優れているわけではないが、そのどちらも一定レベルでこなせるハイブリッド型フォワードと呼べる(昨季はネッツで平均15得点、9リバウンドをマーク)。ジョージのサポート役には適任で、バードが掲げるビジョンにも合致する。

キャリア12年のジェファーソンは、一見すると新生ペイサーズには不似合いに映る。パス優先型でもなく、走力があるわけでもないからだ。それでもペイサーズに欠けていたハーフコートでの得点力を持つベテランである。バードの要求に応えられるだけではなく、2年目のビッグマン、マイルズ・ターナーにポストでの技術を指導する指南役としても期待できる。

またバードは、いまだNBAで才能を完全に開花させられていないジェレミー・エバンスにもチャンスを与えた。ダンクコンテストで優勝したことがあるほど身体能力は高いものの、ユタ・ジャズ時代、ダラス・マーベリックス時代にもブレイクすることはなかった。そんなエバンスも、気づけば28歳。花を咲かすのなら、なるだけ早いほうが良いに決まっている。

こうした補強を行なったバードだが、失ったのはヒルくらいなものだ。ジェファーソンとは2年契約なのでチームの懐事情に大きな影響はない。小規模マーケットに本拠地を置くペイサーズは、チームの将来を抵当に入れることなくリニューアルに成功した。それもこれも、バードの手腕あってのことだ。


新生ペイサーズの中心はエースのポール・ジョージ

正しい方向に進む仕事は、マクミランHCに託された。ボーゲルを解任後、外部から新HCを招聘するのでは、という意見もあったが、バードはマクミランを高く評価している。過去ポートランド・トレイルブレイザーズ、シアトル・スーパーソニックス(現オクラホマシティ・サンダー)のHCとして記録した通算484勝454敗という成績はパッとしない一方、バードはジョージや他の選手と良好な関係を築いているマクミランに信頼を寄せている。

だからこそマクミランにチャンスを与えたのだ。もちろん、課題も与えている。スーパースターがいて、実力のあるベテラン、非常に有能なビッグマンになれる潜在能力を持つ若手が揃ったチームだ。当然、イースタン・カンファレンスのトップ4を狙う力を秘めている。

原文:30 Teams in 30 Days: New-look Pacers seek next level by Shaun Powell/NBA.com


2016-17シーズン NBA全30チーム戦力分析


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ