NBA.comのショーン・パウエル記者が2016-17シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。第3回は、ブルックリン・ネッツ編をお届けする。
2015-16シーズン成績:21勝61敗
新加入選手:アイザイア・ホワイトヘッド、アンソニー・ベネット、トレバー・ブッカー、ランディ・フォイ、ジャスティン・ハミルトン、ジェレミー・リン、ルイス・スコラ、グレイビス・バスケス、カリス・レバート
退団選手:サディアス・ヤング、ジャレット・ジャック、ウェイン・エリントン、ウィリー・リード
ブルックリンに移転してから49勝、44勝を記録したネッツだが、ここ2シーズンは苦しみ、2015-16シーズンはわずか21勝に終わった。
気を付けよう。これはしばらく時間がかかる。ネッツは少ない資産で、長く、場合によっては痛々しい再建プロセスに乗り出そうとしている。それはまるで、ボルトが足りないのに家を建てるようなものだ。今のネッツには材料がまったくないのだ、ブルック・ロペスを除いては――。
ネッツ一筋9シーズン目を迎えるブルック・ロペス。チームリーダーとして再建の中心を担う
ネッツはNBAのどの球団よりもひどい状態になる恐れがある。真の球団を代表する選手がおらず、将来を嘱望される若手も連れてきていない。トレードできる人材は少なく、ドラフト1巡目指名権は2019年までない状態だ。だがこれは、ブルックリンでの成功と引き換えに将来を担保にしたオーナーとフロントのミスへの罰である。
その戦略は不要だった。ニュージャージーからチケット代を支払う余裕のある富裕層が多いブルックリンへ移転する際には、蜜月期間もあった。その間にネッツはブルックリンにバスケットボールがやってきたことを売り出し、勝利の代わりに高い順位のドラフト指名権を集め、サラリーキャップを空けることができた。だが、彼らは(衰え始めていた)オールスター選手のデロン・ウィリアムズを中心にチームを作ることを焦り、そして、墜落した。
金属スクラップから戦艦を造るという無謀な任務を委ねられたのは、ショーン・マークス新GMとケニー・アトキンソン新HCだ。彼らは若く、エネルギッシュで、大胆ではあるものの、奇跡を起こせるわけではない。
オフに着任したショーン・マークス新GM(左)とケニー・アトキンソン新HC。この先数年は我慢を強いられるシーズンが続きそうだ
マークスGMはまず、興味深い一手を打った。ロスターの数少ない財産であるサディアス・ヤングを手放して、インディアナ・ペイサーズからドラフト1巡目指名権を手に入れたのだ。思い出してみよう。大物を獲得しようと焦ったネッツは2013年、ケビン・ガーネットとポール・ピアースを獲得するトレードで、ボストン・セルティックスにドラフト指名権を手放しており、セルティックスは、来季もネッツと1巡目指名権を交換でき、2018年のネッツのドラフト指名権も保持しているのだ。
また、マークスGMは若手の加入も望み、ペイサーズが20位で指名したカリス・レバートを手に入れた。新人ながら、ローテーションで出場時間を得られると期待されるシューティングガードだ。今でも機能的なロペスを除いて、ネッツはプランの大半がうまくいかなかったが、それをマークスGMは清算したのである。
だが、マークスGMは堅実な選手として立場を確立していないフリーエージェントの2選手、タイラー・ジョンソンとアレン・クラブに1億2500万ドル(約129億3000万円)のオファーを提示した。マイアミ・ヒートとポートランド・トレイルブレイザーズがそれらのオファーにマッチしたため、結果として獲得には至らなかったものの、マークスGMは向こう見ずなのか、それとも大胆なのか? おそらくは、その両方だろう。
なお、マークスGMは手ごろな価格でジェレミー・リンを手に入れることができた。これにより、かつてニューヨーク・ニックスを沸かせた英雄が街に戻ってくることになる。だが、今のリンにはそのときのような輝きはない。数年前にニューヨークの街とニックスを虜にしたタレントではなく、時折先発する控えレベルのポイントガードだ。それでも、これはスマートな買い物だと言えるだろう。リンは、エネルギッシュで、頑張り屋で、ファンに愛され、アリーナに必要とされる熱狂をもたらすに違いない。
リンのほかに、ネッツはトレバー・ブッカーとアンソニー・ベネットを割安な価格で手に入れた。ブッカーはタフネスとリーダーシップをもたらす屈強なフォワードだ。また、ベネットは失敗と見なされた元ドラフト1位指名選手で、キャリアを救うチャンスを手にする。出場時間を確保するのに苦労することもないだろう。
新加入のジェレミー・リンは昨季シャーロット・ホーネッツで78試合に出場(先発13試合)。5年連続で平均二桁得点を記録中だ
こうした状況はマークスGMにとってのアドバンテージでもある。ネッツが苦労することは誰もが知っているからこそ、マークスGMはじっくりとチームの価値を高められるダイヤモンドを探すことができるのだ。あと2年はドラフトでのチャンスがないため、マークスGMは想像力をもってタレントを探し出す必要がある。
マークスGMがやらなかったのは、ロペスのトレードだ。平均20.6得点とリーグ有数の得点力を持つセンターで、多くのチームに貢献できるロペスは、マークスGMがオファーに屈しない限りブルックリンに残るだろう。もしかすると、セルティックスがネッツから得たドラフト指名権を差し戻す、ということもあり得るだろうか?
原文:30 Teams in 30 Days: Challenges begin in Brooklyn by Shaun Powell/NBA.com