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[2016-17シーズン戦力分析]ユタ・ジャズ

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NBA.comのショーン・パウエル記者が2016-17シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。第12回は、ユタ・ジャズ編をお届けする。


2015-16シーズン成績:40勝42敗

新加入選手:ジョエル・バロンボイ、マーカス・ペイジ、タイロン・ウォーレス、ジョー・ジョンソン、ボリス・ディーアウ、ジョージ・ヒル、ヘンリー・シムズ

退団選手:トレバー・ブッカー、トレイ・バーク、ケンダル・マーシャル、ティボー・プライス、トーリン・プリンス

チーム再建プランに取り掛かったユタ・ジャズは、2シーズン前と比べ、2015-16シーズンは15勝の上乗せに成功している。つまり、再びプレイオフ進出レベルに到達する準備は整ったと言えるのではないだろうか。

この4年間、ジャズはドラフトによる補強を優先し、この期間に獲得した選手ほぼ全員と延長契約を結んだ。今夏も同様の手法を取るかと思われた中、チームは方針を若干変更。リーグでも若年に含まれるロスターに新人選手を加えるのではなく、2016年ドラフト1巡目に指名した選手を交換要員として3チーム間トレードに加わり、チームにとって最大の弱点とされたポイントガードの補強を実行すべく、経験豊富なジョーダン・ヒルをインディアナ・ペイサーズから獲得した。

2016-17シーズンのプレイオフ進出に向けた準備が整ったと実感したからこそ、もう有望な新人選手を集める必要がないと判断したのだろう。

ヒルに加えて、マイアミ・ヒートからフリーエージェントになっていたジョー・ジョンソンと2年契約、そしてトレードでサンアントニオ・スパーズからボリス・ディーオウも獲得している。今後が楽しみな新人ではなく、ジャズは3人のベテランをチームに加えた。彼らがチームでプレイする期間は限られているだろうが、その間にリーダーシップ、知識を注入し、ロスター内の競争力アップに貢献してくれるだろう。若手の中に経験豊富な選手を加えることこそ、ジャズが次のレベルに進む上で必要な要素なのかもしれない。


ペイサーズからジャズへ移籍したジョージ・ヒル(右)。ルディ・ゴベール(左)との連携プレイに期待

この方針転換の理由の一つには、トレイ・バークの存在があげられる。2013年ドラフトでジャズが指名したバークは、当時チームの未来のPGを担う選手として期待された。デロン・ウィリアムズよりもチームの考えに従順な選手になれると思われたが、生粋のプレイメーカーではなかった。チームのオフェンスの舵を任されたのはゴードン・ヘイワードで、バークはハウル・ネトのバックアップ、そして昨季途中に獲得したシェルビン・マックの控え、つまり3番手に降格した。

だが今季は、ヒルがPGとして起用される見込みだ。ひざの手術から復帰予定のダンテ・エクサムはまだ21歳と若く、ヒル、マックから学び、近い将来ジャズのプレイメイカーとなる準備を整えるだけの猶予がある。

サラリーキャップの関係でスパーズから放出されたディーアウも、ジャズにとっては願ったり叶ったりの存在だ。やや小太りではあるものの、リーグ屈指のスマートさを備え、基礎がしっかりとした選手として評価が高い。34歳と高齢ではあるが一定の出場時間を得て、効率的なプレイでチームに貢献してくれるはずだ。

また、昨年のドラフト1巡目でジャズが指名したトレイ・ライルズも、ラスベガスでのサマーリーグで光るパフォーマンスを発揮し、若きビッグマンのデリック・フェイバーズも毎年レベルアップを続け、チームにとって浮上のきっかけとなり得る今季、キャリア全盛期を迎える可能性がある。

ジョンソンはすでにオールスターレベルではないが、キャリア晩年を迎えた今も、チームにとって有益な活躍が見込める。昨シーズンを通じて成長したロドニー・フッド、アレック・バークスという2人のスウィングマンにとっても学ぶ機会になるだろう。

球団を代表するのは、もちろんヘイワードだ。もはやオールスター級と呼べる、技術に優れた選手として高い評価を受けている。問題なのは、来年オフにヘイワードが現行の契約を破棄して完全フリーエージェントになってしまうケースだ。

26歳のヘイワードは、今がキャリアの全盛期にある。ジャズと延長契約する可能性はゼロではないが、バトラー大学時代の恩師であるブラッド・スティーブンズがヘッドコーチを務めるボストン・セルティックスが獲得を熱望しているという噂は根強い。ヘイワードを納得させられるだけの資金的余裕があっても、恩師との再会、そしてユタよりも大きな市場であるボストンでのプレイを本人が希望すれば、ジャズにはどうにもできない。


スパーズが移籍してきた万能選手のボリス・ディーアウ

2016年ドラフト2巡目で指名したジョエル・バロンボイは、ルディ・ゴベール型の選手。身長こそゴベールより低いもののリーチが長く、リム周辺のディフェンス、リバウンドに優れている。ただ、選手層の厚いチームなら出場時間を与えられないだろう。

これがジャズが今夏取った行動の詳細だ。ベテランを加え、ゴベール、フッド、ヘイワード、エクサム、フェイバーズ、バークス、ライルズの成長を煽り、レギュラーローテーションを決める上でクイン・スナイダーHCに頭の痛い悩みを与えられれば成功と言える。

10選手が出場時間を争うようになるため、チーム内の競争は激しさを増す可能性が高い。だがそれは、チームにとって朗報と言える。プレイオフ進出を狙うチームならば、ローテーションを争う気持ちのぶつかり合いが必要なのだから――。

原文:30 Teams in 30 Days: Jazz seem set to make next step by Shaun Powell/NBA.com


2016-17シーズン NBA全30チーム戦力分析


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ