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[2016-17シーズン戦力分析]ミルウォーキー・バックス

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NBA.comのショーン・パウエル記者が2016-17シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。第10回は、ミルウォーキー・バックス編をお届けする。


2015-16シーズン成績:33勝49敗

新加入選手:ソン・メイカー、マルコム・ブログドン、ミルザ・テレトビッチ、ジェイソン・テリー、マシュー・デラベドーバ、マイケル・ビーズリー

退団選手:ジェリッド・ベイレス、デイミアン・イングリス、アルバート・ミラレス、O.J.・メイヨ、ジョニー・オブライアント、グレイビス・バスケス、タイラー・エニス

1999~2001年以降、2シーズン続けて勝ち越したことがないバックスは、いまだに推進力を得ようとしている段階だ。

いったい何年間、ドラフトロッタリーに回り続けなければならないのだろう? しかしながら、昨季のバックスは今年のロッタリーに回るようなチームだっただろうか?

おそらく、バックスの誰に聞いても説明がつかない難問だ。昨年のオフにフリーエージェントのグレッグ・モンローを獲得したとき、2015-16シーズンはプレイオフ進出が可能なチームと予想された。しかし、チームは崩壊し、またもドラフトロッタリーに回る結果となった。


万能選手として昨季ブレイクしたヤニス・アデトクンボ

まだ線の細いセンターに賭けた2016年のドラフト(ソン・メイカー)も去ることながら、昨季チームにフィットしなかったモンローを放出しなかった決断は不可思議でしかない。だが、上手く機能する方法を見出すことができれば、今季中にチームとして仕上がる可能性を秘めているのも事実だ。

現在のロスターを見ると、一つのポジションに特化した本職のプレイヤーは少なく、複数のポジションでプレイできる選手が多いことがわかる。ジェイソン・キッド・ヘッドコーチの考えで、マッチアップの問題を対戦相手に与えられるということらしい。この考えを浸透させるため、昨季中盤からはヤニス・アデトクンボをポイントガードで起用し始めた。この実験が成功したことで、キッドHCとバックスは、今オフ本職PGの獲得に舵を切らなかった。つまり今季はアデトクンボと、こちらも本職ではないマイケル・カーター・ウィリアムズをPGとして使うという方針のようだ。

代わりにバックスは、パスを優先するマシュー・デラベドーバをクリーブランド・キャバリアーズから獲得した。昨NBAファイナルでは印象に残るパフォーマンスを見せられなかったが、バックスでは1試合平均15分は出場時間を与えられるだろう。


今オフ、キャバリアーズから移籍したマシュー・デラベドーバ

想像してみよう。もしオフにFAのドウェイン・ウェイド獲得に成功していたら、クリス・ミドルトンをスモールフォワードにコンバートさせられただろうか? SFのサイズを持つ選手ではあるが、かえってスウィングマンタイプの選手がさらに増えてしまうことにならないだろうか?

今年のドラフトでは、高校から即NBA挑戦という道を選択した19歳のソン・メイカーを1巡目全体10位で指名。身長こそ216cmあるが、体重はまだ100kg程度で、今も学習段階にある選手だ。たしかに、素晴らしい身体能力に恵まれ、天性のリバウンド、ディフェンス力も備わっている。ただ、もし昨季大半の試合で先発センターとして起用されたモンローのトレード先を見つけられたとしても、メイカーにフルタイムで同じ役割を任せられるようになるのは、まだ先の話だ。

しかし、バックスはすでに先のことを考えている。キャリア平均5.6得点、5.3リバウンドのマイルズ・プラムリーとオフに4年5200万ドル(約53億2800万円)という高額な条件で再契約を結んだのは、“保険”でしかない。求める見返りが手に入るのならモンローを放出し、彼抜きのチームを作るというサインだ。

残された問題は、シュート力の改善だ。バックスが昨季を通じて成功させた3ポイントシュート数は、リーグ最少の440本だった。3ポイントシューターのミルザ・テレトビッチの加入で多少は改善されるだろうが、十分とは言えない。シーズン開幕後、実力のあるシューターを獲得できなければ、ロングレンジからのオフェンス力不足が弱点のまま残ってしまう。


飛躍が期待されるジャバリ・パーカー

キッドHCとバックスの首脳陣は、若く、まだ選手としての形ができあがっていない現在のコアを残すことを決めた。ウェイドとの交渉はさておき、それが今夏のFA市場で積極的に動かなかった理由の一つでもある。アデトクンボ、カーター・ウィリアムズ、ミドルトン、ジャバリ・パーカーは皆24歳以下で、ジョン・ヘンソンもまだ25歳と若い。今季の目標は、彼らにチームが花を咲かせるだけのチャンスを与えることだ。だからといって、数年後も同じメンバーを残すとは限らない。少なくとも、チームに残すか、トレードに出すべきかの判断はつくようになる。

昨季は残念な結果に終わった。2シーズン前の躍進を考えれば、もしかすると、最も期待値を下回ったチームだったかもしれない。今季も失敗するようなら、キッドHCには微調整が必要になるだろう。だが、このことについて触れるのは時期尚早だ。今は、再びプレイオフ進出を狙えるだけの力を手にしていると言える。それも今回は、ファーストラウンドを突破できるだけの潜在能力を秘めている。実現させられるかどうかは、選手たち次第だ。

原文:30 Teams in 30 Days: Bucks ready for return to playoffs? by Shaun Powell/NBA.com


2016-17シーズン NBA全30チーム戦力分析


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ