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[2016-17シーズン戦力分析]フィラデルフィア・76ers

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NBA.comのショーン・パウエル記者が2016-17シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。第1回目は、フィラデルフィア・76ers編をお届けする。


2015-16シーズン成績:10勝72敗

新加入選手:ベン・シモンズ、ティモテ・ルワウ、フルカン・コークマス、ダリオ・サリッチ、ジェリッド・ベイレス、ジェラルド・ヘンダーソン、セルヒオ・ロドリゲス、ブランドン・ポール

退団選手:イシュ・スミス、アイザイア・キャナン

フィラデルフィア・76ersは、過去3シーズン続けて20勝未満に終わっている。また、2011-12シーズンを最後に、プレイオフ進出からも遠ざかっている。

フィラデルフィアは、チーズステーキ目当てに行列を作る人で溢れている。たとえどれだけ時間がかかろうが、それだけの価値があると確信しているからこそ、お気に入りの店に並ぶのだ。たかだかサンドイッチの類のファストフードを買うために長蛇の列に並ぶなど、考えただけで奇妙に思えるかもしれない。だが、こうした要素があるからこそ、皆、76ersに引き付けられるのだ。

あまりにもつらく、長く、空腹で死んでしまうほどの長い行列だった。だが、フィラデルフィアのバスケットボールファンは、ようやく今までよりはマシな日を過ごせることだろう。ファンの大半に、これまでのプロセス、あるいは、そのプロセスが正しかったかどうかを聞けば、まるでベン・シモンズのノールックパスを見た後のように、「とても良かった」と答えるに違いない。

これまでの3年間は、負けるためにプレイしてきたという議論がなされるかもしれないが、もしシモンズが次世代のマジック・ジョンソンとなり、ジョエル・エンビードが健康な状態を保ち、ダリオ・サリッチがNBAでプレイする準備を整えているとしたら、76ersファンは昨季の年間わずか10勝という戦績に対する苛立ちも忘れられるだろう。


2年目の飛躍に期待がかかるジャリル・オカフォー

優勝するにはスーパースターの力が必要だ。スター選手を見つけるのに最適な方法は、ドラフトである。もちろん、将来の活躍が約束されるわけではないが、今後数年ロッタリーに回る可能性のある76ersには十分なチャンスがある。今夏チームに年間35~40勝をもたらしてくれるような力のあるベテランを獲得しなかったことで、来年の夏、大物フリーエージェント選手を1人、あるいは2人獲得する余裕を残している。それもこれも、今シーズンの結果次第ということだ。ひょっとしたら、前GMのサム・ヒンキーは、「なぜこの手に気がつかなかったんだ」と思っているかもしれない。

今の段階で76ersが求めているのは、明るい未来の兆候だ。それは、2016年ドラフト全体1位指名の新人、シモンズから始まる。シモンズの最大の武器は、コート上でチームメイトを探し出せることにある。結果的としてチームメイトに、よりイージーな得点機会をもたらすことに繋がる。特に、昨季はコート外で様々な経験をしながらも平均17.5得点をあげたジャリル・オカフォーの力を生かすことが可能だ。全員のプレイをレベルアップさせ、チームを1つにまとめるシモンズが持っているような能力は、教えられて身につくものではない。つまり、彼の存在価値は他の新人の倍はあるということだ。現時点の76ersを救うだけでなく、将来的にもチームをこれまでと異なる見方で捉えてくれるFA選手の獲得に繋がる可能性もある。

現段階でチームの力になれるとわかっているシモンズについて心配することはほとんどない。むしろチームの最大の関心事は、トレーニングキャンプにおけるエンビードだろう。足の負傷によりNBA入りからの2年を棒に振ったビッグマンは、ようやく再スタートを切る準備が整った。


2014年ドラフト全体3位指名の“未完の大器”、ジョエル・エンビードがいよいよNBAデビューを飾る

そのほか、76ersは2年前のドラフト1巡目で指名され、ここ2シーズンは海外でプレイしていたクロアチア出身のサリッチと契約した。シモンズに加えて、サリッチ、エンビード、オカフォー、ナーレンズ・ノエルとビッグマンが豊富に揃った76ersは、フォワードとセンターの数が余剰気味だ。だが、それはトレーニングキャンプで選手をふるいにかけて役割を明確にし、チームに適さない選手を1人か2人、トレードで放出すれば良いだけの話だ。

かつては有毒で不毛の地と呼ばれていたチームのロスターが、今では可能性に溢れる庭園に変わった。新GMのブライアン・コランジェロに課せられた仕事はまだ多いものの、今後の76ersを支えるコアグループを作る上で、複数の選択肢の中から1つを取ることができる。

コランジェロGMは、事を急ぐのを良しとしていない。だからこそ、今夏のFA市場で活発な動きを見せなかった。新たに獲得したのはガードのジェラルド・ヘンダーソンとジェリッド・ベイレス、そしてセルヒオ・ロドリゲスだ。チームにベテランのリーダーシップをもたらす存在で、3選手共に格安だった。これからシモンズのプレイを見られるのだから、今、積極的に動く必要はない。チームが育ち、シモンズが成長して評価を高め、トップクラスのFA選手が76ersへの移籍を検討するときが来るまで、ただ待てば良いのだ。

長期間の連敗、ひやかし、まばらな客席は、もう過去のことだ。76ersにとって、今年の夏はここ数年で最も意味のあるものになった。氷河期を抜け出した今、猛吹雪が彼らを襲うことは、もうない。

原文:30 Teams in 30 Days: At last, Sixers may be turning corner by Shaun Powell/NBA.com


2016-17シーズン NBA全30チーム戦力分析


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ