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プレーオフ準決勝プレビュー: ブルズ対キャバリアーズ

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シカゴ・ブルズ、そしてクリーブランド・キャバリアーズの両チームにとって、この準決勝は大きな試練となる。

キャブズはボストン・セルティックスとの1回戦で、ビッグ3の一角、ケビン・ラブが左肩を脱臼し、離脱。手術を受け、今季中の復帰は不可能となった。ミネソタ・ティンバーウルブズ時代のようなモンスター級の活躍はなかったものの、ラブは、レブロン・ジェイムズとカイリー・アービングがオフェンスだけに集中している時に守備の要だった存在。そのラブが抜けた穴をどうやって埋めるのかが、大きなポイントになるだろう。

ブルズにとっての試練は、プレーオフで何度となく行く手を遮られてきた憎きジェイムズを乗り越えられるかどうか。キャブズ、そしてマイアミ・ヒート時代を含め、ブルズはジェイムズが所属したチームとの対戦成績(プレーオフ)で3勝12敗と大きく負け越している。今季のキャブズは序盤時期こそ出遅れたが、レギュラーシーズン後半戦から噛み合い始め、中盤戦以降はホームで22勝1敗という圧倒的な強さを誇った。

そんな両チームのシリーズで注目される5つのポイント、展望、勝敗予想を、NBA.comのスティーブ・アシュバーナー記者が独自の視点で予想した。 

◆5つの注目ポイント 

1. ラブ不在の影響は?

簡単に勝利を諦めるようなチームなら、チームNo.3が抜けたことを言い訳にするだろう。だが、レブロン・ジェイムズの辞書に、そのような文言は収録されていない。ラブはスペースを生み出すことにも貢献したが、ジェイムズとアービングの攻撃力、そしてブルズ戦で平均14.3得点を記録したラブよりも、J.R.・スミスのほうが17.3得点とブルズとは相性が良い。 

2. キャブズのプレッシャーは軽減されたか? 

馬鹿なことを言ってはいけない。NBAで現役を続けている間、ジェイムズがプレッシャーから解放されることはない。ましてや昨年のオフに、満を持してヒートから地元クリーブランドに優勝をもたらすためキャブズに復帰したのだ。キャブズには優勝が至上命令。よって、ジェイムズにとっては5年連続のファイナル進出は絶対ということになる。仮に、今季開幕からレギュラーシーズン最終戦までリーグの話題を独占したゴールデンステイト・ウォリアーズとファイナルで対戦すれば、幾分かは重圧から解放されるかもしれない。そうでなければ、これまでと同様、プレーオフの成績がジェイムズの評価に繋がる。

3. シリーズスケジュールの影響は?

2日おきに試合が進むシリーズは、ブルズにとっては有効のはず。出場時間の長いジミー・バトラーに休養を与えられ、デリック・ローズにとっても、1日間隔より2日おきの試合のほうがコンディションを整えやすい。そして、セルティックスをスイープで下したキャブズが1週間のオフを挟んだのに対し、ミルウォーキー・バックスとの1回戦で6試合戦ったブルズには、必要な休息だ。

4. デリック・ローズはカイリー・アービングを抑えられるか? 

バックスとの1回戦で、アービングよりもスピードとパフォーマンス内容で劣ったマイケル・カーター=ウィリアムズにてこずったことを考えれば、難しい。バトラーがジェイムズの対応に迫られるため、ブルズにとって最適なアービング対策は、トニー・スネルだ。リーチのあるスネルは、いわばサンアントニオ・スパーズのカワイ・レナードに近いタイプと想定できる。
 
5. デイビッド・ブラットとトム・シボドーの手腕差
 
NBAで26年の指導者歴を持つシボドーHCと、1年目のブラットHCでは、経験差は歴然。仮にキャブズが準決勝敗退となれば、チームの顔であるジェイムズとブラットHCの関係悪化は必定。
シボドーHCはブルズと残り2年の契約を残しているが、もしカンファレンス決勝進出を逃せば、両者は自然と袂を分かつことを考え始めるかもしれない。

◆シリーズ展望 

キャブズの攻撃はアービングとジェイムズが中心を担う。ジェイムズはポイントガードもこなせるが、ベストはパワーフォワードのポジションで、ほかに1人シューターを置ける展開だろう。
ここ5シーズン続けてリーグトップクラスの守備力を誇ったブルズだったが、今季は守備、そしてリバウンドともに状況が異なる

ブルズはピック&ロールを多用するチームではない。両サイドにボールを散らして、ローズとバトラーにボールを渡して活路を見出すチームだ。シュートに秀でているチームではないが、フリースロー成功率と、オフェンシブリバウンド率は高い。
キャブズはレギュラーシーズン中のトレードでティモフェイ・モズゴフとイマン・シャンパートを獲得してから守備が改善し、今季はリーグ最低の被フリースロー率を記録。ジェイムズをスモールフォワードに置き、フロントコートにサイズのある2選手を配置する布陣こそ、キャブズにとって最も効果的な守備隊形と言える。

◆勝敗予想 

これまでのジェイムズ対ブルズを考えれば、今季のブルズの方が、チームとしては対抗できるという意見が出ている。つまり、あらゆる方法でキャブズを相手に得点を量産できるということなのだろう。だが、キャブズ、あるいはヒートは、勝負の分かれ目となる時間帯にジェイムズをポイントガードのマークにつけて打開してきた。シボドーHCは、相手よりも多く得点を奪うことで勝つ方法は好まないだろうが、ブルズが勝つには、オフェンスで上回るしかない。
キャブズは、レギュラーシーズンを通じてジェイムズを中心としたプレーを構築し、アービングも攻守両面で大きく成長した。つまり、ラブがいなくとも対応できるということ。従って、キャブズが4勝2敗でカンファレンス決勝に進出する可能性が高い。

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