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NBAファイナルプレビュー: キャバリアーズ対ウォリアーズ

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レブロン・ジェイムズは、あと4勝をあげるまで決して満足しない。それは、ステファン・カリーにも共通することだろう。

球団初優勝を狙うクリーブランド・キャバリアーズ、そして40年ぶりの優勝を目指すゴールデンステイト・ウォリアーズが、2015 NBAファイナルで激突する。

今季開幕から絶好調を維持し続けたウォリアーズとは異なり、キャブズは苦しみながらも段階を経て、着実にチーム力を上げてきた。負傷者続出の不運に見舞われ、開幕から39試合を終えた時点で19勝20敗と不振を極め、トレードで新たなメンバーを獲得し、ようやくケミストリーを構築したかと思えば、プレーオフ1回戦でケビン・ラブが離脱。カイリー・アービングも足とひざを痛めてしまい万全ではない。そんな中、ジェイムズの奮闘はもちろんのこと、トリスタン・トンプソン、マシュー・デラベドバ、J.R.・スミス、イマン・シャンパートら、サポーティングキャストの成長と奮起に助けられ、ファイナルへと勝ち進んだ。

昨シーズンのプレーオフ1回戦でロサンゼルス・クリッパーズに敗れたウォリアーズは、スティーブ・カーを新HCに迎え、再び念願の優勝に向かい、歩み始めた。カリーとクレイ・トンプソンによる“スプラッシュブラザーズ”は数段階上のレベルに到達し、ドレイモンド・グリーンはリーグ屈指のプレーヤーへと成長。そして、昨季は控えに甘んじていたハリソン・バーンズも再び高い評価を得るまでになった。流れるような攻撃がシーズン終盤まで続くか疑問を持たれたこともあったが、選手層の厚さ、一人ひとりの技術の高さで好調を維持し続け、レギュラーシーズンで67勝をあげた実力を、プレーオフでも変わらず発揮している。

そんな両チームのシリーズで注目される5つのポイント、展望、勝敗予想を、NBA.comのセクー・スミス記者が独自の視点で予想した。

◆5つの注目ポイント

1. ドレイモンド・グリーンはレブロン・ジェイムズを1対1で抑えられるか? 

ここ2シーズンのファイナルで、サンアントニオ・スパーズのカワイ・レナードが講じた“レブロン・ジェイムズ対策用DVD”を参考にすれば、ジェイムズの動きを抑えられる可能性はある。直近2度のファイナルを見れば、ジェイムズ対策が勝利をあげる上で重要なことは一目瞭然だ。ジェイムズには複数の選手がマークにつくだろうが、主に対応するのはグリーンのはず。この対決が、シリーズを面白くする要因となるだろう。

2. キャブズのサポーティングキャストは実力以上の力を発揮できるか?

プレーオフに入り、トンプソン、ティモフェイ・モズゴフ、シャンパート、デラベドバ、ジェイムズ・ジョーンズ、そして特にスミスの状態が上がってきている。ファイナルは、アトランタ・ホークスとのイースタン・カンファレンス決勝から9日後に行なわれるものの、彼らのリズムに狂いは生じないだろう。トンプソンとモズゴフのフロントコートが、小柄なウォリアーズのフロントコート(アンドリュー・ボーガット、グリーン、バーンズ)をしのげるかどうかも大きなポイントになる。

3. どちらのチームに、よりプレッシャーがかかるか?

プレッシャーは同レベルと考えて良い。2007年にファイナル進出を果たしながら、スパーズにスウィープで完敗した事実は、キャブズとジェイムズにとって嫌な思い出でしかない。40年ぶりの優勝がかかるウォリアーズにとっても、精神的な負担は小さくないはずだ。

4. 就任1年目HCの手腕

カーHCは現役時代にファイナルを経験しているが、デイビッド・ブラットHCには未経験だ。その点だけを見れば、カーHCのほうが対応は早いはず。就任1年目のHCがファイナルで対決するのはリーグ創設初年度の1947年以来初のことで、当時はシカゴ・スタッグスを率いたハロルド・オルセンと、フィラデルフィア(現ゴールデンステイト)・ウォリアーズを率いたエディ・ゴットリーブが対峙した。
 
5. ウォリアーズのセカンドユニット

今季のウォリアーズが成功した要因は、選手層が厚く、バランスに優れたセカンドユニットの存在があったからこそだ。アンドレ・イグダーラ、ショーン・リビングストン、リアンドロ・バルボサ、フェスタス・エジーリ、デイビッド・リーがそれぞれの役割をこなしているからこそ、攻守ともにハイレベルなプレーを実現することができてている。経験豊富な選手が揃っているだけに、ファイナルでも力を発揮するはずだ。

◆シリーズ展望

ウォリアーズのオフェンスペースを決めるのはカリーで、スコアラー、そしてチャンスメーカーとしても、その実力は超A級と言える。NBA史上ベストと呼んでも過言ではないシューティング・バックコートを軸としたオフェンスだけではなく、バーンズもアイソレーションでサイズの大きな相手に立ち向かい、展開を作ることができる。インサイドで中心になれる選手はいないが、カリーがペイント内に侵入し、オープンなチームメイトを作るシーンはたびたび見られる。守備から攻撃への転換の速さに優れるキャブズが、ウォリアーズの武器を抑えられるかどうかが、1つのカギとなるだろう。

キャブズのポイントガードはアービングだが、プレーオフではジェイムズが攻撃を組み立てる役割を担う場面が多い。キャブズのオフェンスはシンプルで、ジェイムズのピック&ロールかポストアップからオープンな選手を作る、もしくはジェイムズがドライブから得点を奪いにいく傾向が強い。また、アービングかスミスが、相手チームのウィークサイドをつくことも可能だ。

ウォリアーズの主な対策は、ジェイムズを止めること、そしてトンプソンにリバウンドを取らせないことの2つだろう。ほかのチームよりもジェイムズとマッチアップできる選手が多いのがウォリアーズの強みで、バーンズ、グリーン、イグダーラがマッチアップすると考えられる。展開次第では、リビングストンとトンプソンも、ジェイムズ対策に当たる可能性がある。

◆勝敗予想

ともに優勝を目標に掲げてきただけに、エキサイティングなシリーズになるだろう。キャブズの命運を握るのは、アービングの健康状態だ。プレーオフでこそチームとしてのまとまりが見られるキャブズだが、レギュラーシーズンでは標準レベルのチームという評価を覆せない試合も多かった。

逆にウォリアーズは、昨年のトレーニングキャンプから優勝を目標とし、一切ぶれずにチームを作り上げた。そして、NBA最高の戦績を残し、悲願の優勝まであと4勝という位置につけている。完成度の高さで上回るウォリアーズが、4勝2敗でラリー・オブライエン・トロフィーを勝ち取ると予想したい。

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