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プレーオフ1回戦プレビュー:バックス対ブルズ

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シカゴ・ブルズ(50勝32敗/イースタン・カンファレンス第3シード)にとっては対戦相手に恵まれた1回戦かもしれない。仮にワシントン・ウィザーズとのリマッチが実現していたら、昨季の勝利で自信を得たネネ、マーチン・ゴータットが活躍した可能性は高く、万全なコンディションではないデリック・ローズもジョン・ウォールに翻弄されただろう。ミルウォーキー・バックス(41勝41敗/同第6シード)とのシリーズなら、移動距離も少なくて済むだけに、2回戦を見据え、チーム状態を上げられる。バックスはと言えば、昨季ブルックリン・ネッツをプレーオフに導いたジェイソン・キッドHCが今季から舵を取り、レギュラーシーズンを通してチームケミストリーを構築してきた。

ブルズ有利と見られる同シリーズで注目される5つのポイント、展望、勝敗予想を、NBA.comのスティーブ・アシュバーナー記者が独自の視点で予想した。

◆5つの注目ポイント

1. デリック・ローズの健康状態は問題になるか?

ローズ本人も、トム・シボドーHCも、そしてブルズも「No」と答えるのは間違いない。ブルズはバックスとのシリーズを勝ち上がることだけに集中するだろう。ローズはレギュラーシーズン後半戦の大半を欠場し、現地15日に行なわれたアトランタ・ホークスとの最終戦の後半をベンチで見守った。その理由は、2012年4月に前十字靭帯を断裂した左ひざの痛みだったという。しかしシボドーHCは、1回戦の初戦からローズを起用するための判断と強調した。 

2. ホームなのに敵地同然?

ブルズファンにとっては本拠地ユナイテッド・センターの試合よりも、バックス本拠地ブラッドリー・センターの試合チケットのほうが安く手に入る。そのため、バックスの会場にも関わらず、ブルズファンが大挙してやって来る可能性も考えられる。たとえそうなったとしても、バックスにできることはない。大勝して黙らせるしかないのだ。

3. バックスはブランドン・ナイトの放出を悔やむ?

キッドHCにとっては耳が痛い質問だろう。事実、バックスはナイトをトレードでフェニックス・サンズに放出する前は30勝23敗。1試合平均99.2得点に対し、失点は97.2で、フィールドゴール成功率は46.6%、3ポイントシュート成功率は37.8%だった。だが、トレード後は11勝18敗。平均得点よりも失点のほうが2.5点多く、FG成功率も44.5%、3P成功率も33.3%に落ち込んだ。

4. バックスにとって優位なマッチアップとは?

リーチが長く、機動力とボールスキルに優れるヤニス・アデトクンボのような選手は、あまりいない。今回のシリーズでは、おそらくマイク・ダンリービーか、ジョアキム・ノアとマッチアップするだろう。まだアデトクンボは未熟で、成長が求められる部分は少なくないが、レギュラーシーズンのラスト11試合で平均14.1得点、6.4リバウンド、FG成功率50.9%と結果を残した。長いリーチを誇る“グリークフリーク”に、控えビッグマンのジョン・ヘンソンがいれば、ターンオーバーの多いブルズをポゼッションで上回れるだろう。 

5. 82試合を消化した後も不明瞭なブルズのアイデンティティ

昨季までのブルズの信条は、粘り強さと堅守だった。それが今季は崩壊。レギュラーシーズンで喫した32敗の半数は、勝率5割を下回るチームによるもので、最優秀守備選手賞を受賞したノアに代わり、今季から加入したパウ・ガソルをセンターで起用しているため、シボドーHCが提唱する固い守りにも綻びが生まれた。プレーオフが始まる今、ブルズは守備で相手をジリジリ追い詰めるのではなく、序盤の得点で勝負を決めるつもりなのだろうか? 負傷者が多く、予測のつかないシーズンにはなったが、メンタル面の弱化による面が多いとも言える。

◆シリーズ展望

守備の強みが薄れたとは分、ブルズのオフェンスは強化された。特にガソルは、同1月10日に行なわれたバックス戦で、自己最高の46得点、18リバウンドと大暴れし、95-87での勝利に貢献。ローズはかつての姿を取り戻せていないが、現時点ではオフェンスのペースアップを促してくれれば十分だ。

バックスの強みは、マイケル・カーター=ウィリアムズがチームを機能させていること。ナイト放出後、試合終盤に進んでシュートを打つ存在が出ていないが、トレード前は1試合平均11.4得点、9.2本のシュートにとどまったクリス・ミドルトンが、トレード後には16.7得点、14.3本のシュートを打ち、スコアラーの役割を引き継いだ。エルサン・イルヤソバの3Pという武器も脅威で、速攻でのアデトクンボも大きな武器となる。

◆勝敗予想

昨年12月にスター候補生のジャバリ・パーカーが前十字靭帯損傷で離脱してからというもの、バックスは失う物がない姿勢でプレーオフ進出を勝ち取った。ブルズも運に恵まれず、東の決勝までたどり着けなければ、オフに大幅な改革を断行する可能性もある。だが、このシリーズはブルズが本来の姿を取り戻すためにあると考える。つまり、ブルズが4勝1敗で勝ち上がると予想したい。

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