[宮地陽子コラム第32回] アイザイア・トーマスが語る
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[宮地陽子コラム第32回] アイザイア・トーマスが語る"小兵の心構え"

フェニックス・サンズの得点源として活躍する身長175cmのガード、アイザイア・トーマスは、NBAを目指す小柄な選手にとって大いに励みになる存在と言えるだろう。今季Dリーグのテキサス・レジェンズでプレーする予定の富樫勇樹も参考にしているという"小さな巨人"が、その心構えを語った。

今のNBA現役選手の中で、登録身長が一番低いのは、ネイト・ロビンソンデンバー・ナゲッツ)とアイザイア・トーマスフェニックス・サンズ)。2人とも、5フィート9インチ(約175cm)で登録されている。

Dリーグのテキサス・レジェンズに加入した富樫勇樹にとっては先駆者であり、手本となる選手だ。実際、富樫はダラス・マーベリックスのコーチから小さい選手のプレーを見て研究するように勧められ、特にトーマスのプレーを参考にしているという。

そこで、当のトーマスは小さい選手としてどんな心構えでプレーしているのか、彼自身、どんな選手たちから学んできたのか、聞いてみた。


──これまでに何度も『NBAでプレーするには小さすぎる』と言われてきたと思うのですが、不利とされるサイズ不足をどうやって乗り越えてきたのでしょうか?

「一生懸命に努力し続けることで乗り越えてきた。言葉をすべて自分のモチベーションとして、そう言う人たちが間違っているということを証明するためにね。僕はずっとそうやって言われてきたからもう慣れたけれどね」。

──コート上で、サイズ面で足りないものを補うためにはどんなことをするようにしているのでしょうか?

「自分の長所を使うようにしている。スピード、俊敏さ、そしてほとんどの選手よりもフロアに近いところでプレーできるということだ。でも、コートに出たときには、身長の差は感じない。自分も他の選手たちと同じ身長だという気持ちでプレーしている」。

──昔からずっと、まわりより小さいサイズでしたか?

「その通り(笑)。昔からなんだ」。

──ずっと小さいということは、それだけ小さいサイズで戦うということに慣れて、戦い方も知っているということですよね?

「そうだね。確かに慣れている。どのレベルでプレーしていたときも、ずっと一番小さい選手だった」。

──スピードがあっても、ただ単に速くプレーすればいいというものではないですよね?

「そうだね。ディフェンスの守り方によって適応しなくてはいけない。クリエイティブになること。小さい選手にとって、それが一番重要なことかもしれない。クリエイティブにプレーし、ディフェンスをあわてさせなくてはいけない」。

──ディフェンスのときのほうがサイズ不足の影響があるのではないかと思うのですが、ディフェンスではどういったことを心がけていますか?

「相手の選手をできるだけゴールから遠ざけていたほうが僕にとってはアドバンテージがあり、ゴールに近ければ相手のアドバンテージのほうが大きくなる。そのことを意識して、できるだけ自分のポジションをキープし、相手の選手を前に出させないようにしている。僕にはほとんどの相手を抑えるだけのパワーはあるから、それを自分のアドバンテージに使うようにしている」。

──つまり力強さが必要ということですね。

「それは間違いない。小さいからこそ、特に力強さが必要だ」。

──サイズの小さな選手を見て、彼らのプレーを研究したことはありますか?

「デイモン・スタウダマイアー、アレン・アイバーソン、年上のアイザイア・トーマス、ネイト・ロビンソン……。僕の前にプレーしていた小柄な選手のことは、みんな尊敬して見習っている」。

──そういった選手たちから得たものは何ですか?

「彼らはみんな、自分の持ち味を発揮してプレーしていたということだ。誰も、相手に屈することなく、自分たちのほうが大きいぐらいのつもりでプレーしていた。それが大事なことだと思う」。

──今年夏にダラス・マーベリックスのサマーリーグ・チームでプレーしたユウキ・トガシという選手を知っていますか?

「あぁ、確か、最近マブスと契約したよね? 身長が5-6(167cm)ぐらいだと聞いた」。

──その彼です。今シーズン、Dリーグのレジェンズでプレーすることになりました。彼は、あなたのプレーを見て研究しているそうです。

「そうなんだ。彼のことはどこかで読んだよ。いい選手だよね。すごく速い。本当に速い」。

──彼に何かアドバイスをするとしたら、どういった言葉をかけますか?

「自分自身であること。そして、誰に対しても遠慮することなく、競うこと。それが一番大事なことだ。まわりに、誰であっても恐れていないこと、このレベルでプレーするだけの実力を持っていることを見せることだ」。

実は、彼は日本人選手と同じチームにいたことがある。並里成(bjリーグ 琉球ゴールデンキングス)だ。並里がスラムダンク奨学金でサウスケント・スクールに留学したとき、サウスケントにいたのが、卒業する間近のトーマスだった。トーマスも、並里のことを覚えているという。

「うん、彼のことは覚えているよ。彼も小さかったよね。あの頃、オフシーズンに少しだけいっしょにプレーしたけれど、すごく速くて、クイックで、いい選手だった。才能がある選手だった。シュートもうまかった」。

富樫にとっても、並里にとっても、そして、多くの小さな日本人選手にとっても手本となり、インスピレーションとなるトーマス。今年夏には、4年間2800万ドルの契約でサンズに移籍。小さな選手でも、その持ち味を突き詰めればNBAで認められるということを証明している。

彼が語る言葉のほとんどは、スキルや技術のことではなく、心構えやメンタリティに関する話だった。それだけ気持ちが大事ということなのだろう。「コート上では他の選手と同じ身長だと思ってプレーしている」という言葉が印象的だった。

文:宮地陽子  Twitter: @yokomiyaji


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