[丹羽政善コラム第7回]ポール・ジョージ――さらなる高みを目指す異色の成長株
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[丹羽政善コラム第7回]ポール・ジョージ――さらなる高みを目指す異色の成長株

レブロン・ジェイムスやケビン・デュラントといった派手な選手の影に隠れているが、今季、MVPのダークホースと言われているのが、ペイサーズのポール・ジョージである。

2010年6月のドラフトで、ペイサーズから1巡目(全体10位)で指名され、今季が4年目。昨季中盤から覚醒し、昨季は、「最も成長した選手」にも選ばれた。

今季は、開幕からペイサーズ躍進の原動力となり、チームをヒートの3連覇を阻む有力チームに押し上げている。

オフェンス、ディフェンス両面で優れ、かつてのスコティ・ピッペン、トレイシー・マグレイディといったスター選手を彷彿とさせるジョージが、これからどこまで成長するか。

次のテストが、間近に迫る。


無名の存在からNBAまで駆け上がった異色の選手

異色の選手である。NBAのトッププレイヤーの多くは、高校時代から名を馳せ、ケンタッキー大やデューク大といった、バスケットの強豪校で1年だけプレイしてから、NBA入りするパターンが少なくない。

しかしポール・ジョージの場合、バスケットを本格的に始めたのが高校に入ってからということもあって、高校時代は無名。ESPNが発表する高校生のトップ100にも入らず、「ライバルズ150」という、やはり高校生を評価するサイトでも、150位以内に入っていなかった。

結局大学は、引退したアレン・アイバーソン(シクサーズほか)らがプレイしたジョージタウン大などから、特待生としての誘いがあったというものの、カリフォルニア州立大学フレズノ校(通称フレズノ州立大)という、マイナーな大学へ進学している。

通常、これはNBAを目指す選手にとって不利に働く。名門大学でプレイすれば、スカウトも多く訪れ、彼らの目に留まるが、フレズノ州立大では、それも限られる。また、強豪大学との対戦も少ないため、実力の評価が難しい。

ただ、この回り道が、結果的には彼にとってはプラスに働く。

プレイ経験の少ない彼は、出場機会がどの程度あるかを大学選びで考慮。フレズノ州立大では、1年生からレギュラーとなる可能性が高かったことから、同大学への進学を決め、予定通り1年生からレギュラーとなると、2年間、貴重な経験を積み重ね、そのままドラフトの順位を上げていったのだった。

彼のバスケットの原点はしかし、その2年以上に子供の頃、姉と行なった1対1のバスケットか。高校に入るまではチームに入らなかったが、ペッパーダイン大学にバスケットの奨学金をもらって進学した姉に鍛えられ、スキルを磨いたそうである。

急成長を遂げるにきっかけとなったターニングポイント

さて、高校までの遅れを取り戻し、階段を二段飛ばしでNBAまで駆上がったジョージだが、そこからは決して、順調とは言えなかった。

最初の2年は、平均出場時間が30分を超えず、平均得点は1年目が7.8点、2年目が12.1点と、ドラフト1巡目、全体の10番目で指名された選手としては、少し物足りなかった。

2011-12シーズンのオールスターでは、スラムダンクコンテストに出場して身体能力の高さを、2012年2月3日の試合では、7本の3ポイントシュートを決め、非凡なシューティング能力をそれぞれ披露したが、コンスタントな活躍が計算できる選手ではなかったのだ。

伴って、リスクを承知で彼をドラフトしたラリー・バード現球団社長に対しても批判が出たが、それはやがて、賞賛に変わる。ジョージが、予想以上の選手へと昨季半ばから急成長を遂げていったからだ。

ターニングポイントは、2012年12月1日のウォリアーズ戦。この日ジョージは、7本のシュートを打ち、すべてを外した。得点は0点。ウォリアーズのディフェンスが彼を勝ったというより、自滅に近かった。


すると試合後、インディアナポリスに戻る機中で、彼は、決心をしたそうだ。

「これまで以上に準備をして試合に臨もう」。

翌朝、7時にインディアナポリスに着くと、ジョージはそのままジムに向かい、約500本のシュート練習をしたという。


意識を変えたジョージが見据える、さらなる高み

その時のことを、「SB NATION」の取材に対し、こう答えている。

「試合前の準備を変えていかなければならないと思った。これまでが十分ではなかったとは言わないけれど、さらに、練習が必要だと思った」。

以来、彼の有名なルーティーンが出来上がっていく。

現在はこんな感じだそうだ。

***************************
7時試合開始の場合

午後3時30分 アリーナ到着

ウェイトトレーニング
シュート練習(250本)
マッサージ

試合へ
***************************

成長の裏には、昨年までペイサーズのアシスタントコーチを務めていたブライアン・ショー(現ナゲッツヘッドコーチ)らの存在もある。

例えばショーは、ジョージが子供の頃に憧れたコービー・ブライアントが、どんなトレーニングをして、どうやって試合の準備をして、どう相手の研究をしたかを、伝えたそうである。ジョージは、そんな話にインスパイアされた。

また、ペイサーズの試合のテレビ解説を務め、マイケル・ジョーダンから信頼を得ていたクィン・バックナーと時間を過ごし、ジョーダンの食生活、トレーニング、試合に入るまでのルーティーンを聞き、やはり参考にしたそうである。

3ポイントシュートコンテストとスラムダンクコンテストに出て、両イベントで優勝を狙えるほどの才能を持ち、ピッペン並みのディフェンス力を誇るジョージ。そんな彼に新たな意識改革が加わり、あの12月1日を境に、彼はキャリアの階段をまた一つ上がった――。

その彼は今、さらに上を見ている。

昨季は、連覇を成し遂げたヒートを追いつめ、カンファレンス・ファイナルでゲーム7まで持ち込んだ。

今季こそ、ヒートを越えられるか。

そのとき、ジョージのさらなる成長が求められる。

文:丹羽政善

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